THE KERRY DANCERS (Riverside)
- Johnny Griffin

  1. The Kerry Dancers
  2. Black Is The Color Of My True Love's Hair
  3. Green Grow The Rushes
  4. The Londonderry Air
  5. 25 1/2 Daze
  6. Oh,Now I See
  7. Hush-A-Bye
  8. Ballad Foe Monster

Johnny Griffin (ts)
Barry Harris (p)
Ron Carter (b)
Ben Riley (ds)

1961/12/21,1962/1/5 & 29 (New York)

ジョニー・グリフィンの『ケリーズ・ダンス』を聴くたびに、「余裕綽綽のアイドリング・プレイ」という言葉が思い浮かぶ。

ブリブリと暴走機関車のように吹きまくるスタイルがトレードマークの“リトル・ジャイアント”グリフィン。

しかし、このアルバムでの彼のプレイは終始一貫して穏やかだ。
全編に渡って肩の力が抜けた穏やかな吹奏。

たとえば『リトル・ジャイアント』や『ブロウイング・セッション』で聴ける、熱く疾走を繰り広げる熱血テナーとは一線を画している。

おおらかで、朗々としたテナーだ。

しかし、彼のエンジンはアイドリング状態。
巡航速度で走る中、ほんの少しだけアクセルを踏み込めば、ものの一瞬で見事な加速がかかる。

この“一瞬加速”が随所にあらわれるところが面白い。
ただ、穏やかに吹いているわけではないのだ。

サウンドの表情とは裏腹に、グリフィン・エンジンは熱い。
いつでも高速で飛ばせる臨戦態勢を整えつつも、持てるパワーを6割程度にまでに抑えて余裕綽綽と吹いている。

ニクい!

頑張り過ぎず、さり気なく深い味わいを出せるグリフィンは、まぎれもなく名人の域に達している。

また、アイデア先行型の奇抜なラインを奏でず、終始堅実な低音で演奏を縁の下から支えるロン・カーターのプレイにも好感。
(2007/04/11) 
“通”にこの盤を愛する人が多いみたいだ。
ま、私の周囲にかぎっての話なのかもしれないが。

森の中に椅子を持ち込んで、椅子とともにポーズをキメるグリフィンのジャケット。森の中の椅子で、いったい何をやるつもりなんでしょうね?
ま、それはともかくとして、ここでのグリフィンは、持ち前のアグレッシヴさに少しブレーキをかけているようだ。
少なくとも、貪欲に前へと進んでゆく推進力の権化とでも言うべき、“ブリブリ”なグリフィンではない。
もちろん、その片鱗は見せるが、本腰は入れない。

むしろ、一歩引いた感じの、ちょっとジェントルなグリフィンを味わえる。
それは、このアルバムの前半の4曲は、イギリスやアメリカの有名なフォークソングを取り上げていることと無関係ではないはずだ。
曲に敬意を払ってか、それともあまりに暴れすぎると後が怖いからか、とにかく、控えめなグリフィンを感じる。もちろん、ちょっとした語尾には、グリフィン独特の“訛り”は出てしまっているけれども。

ギラリと黒光りする音色がトレードマークのグリフィンだが、この盤で聴けるトーンは、穏やかでウォームな音色。
エッジも丸く、ふくよか。
ロリンズ的なまろやかさを感じるが、実際、1曲目の出だしの数音を初めて聴いたときはソニー・ロリンズのアルバムかと勘違いしたほどだ。

音色もそうだが、このアルバムの特に前半のグリフィンは、アドリブの“歌い方”にもロリンズに通ずるユーモアとしなやかなタフさが感じられる。

特に、しみじみとした《ロンドンデリー・エア》なんかは、イケイケなイメージの強いグリフィンにしては意外な選曲だと思う。
しみじみとした歌いつつも、フェイクさせたところどころのメロディの断片のスピード感は、やっぱりグリフィン。

アルバムの白眉は《ハッシャ・バイ》か。
この曲があるゆえに、この盤を愛す。こういったファンって結構多いような気がする。
気がつくとエキサイトしているグリフィンがカッコいい。
最初は下手に出ていても、結局はいつもの調子に戻りかけちゃうのね、ってところが微笑ましい。
もっとも、彼はこの曲を気に入っているのだろうか、同名の『ハッシャ・バイ』というタイトルのアルバムで、再びこの曲にトライしている。

個人的なフェイヴァリットは、《オー,ナウ・アイ・シー》だ。
スローテンポのバラードだが、前出の《ロンドンデリー・エア》のしみじみさとはうって変わって、こちらは、ドスの効いたしみじみさを感じる。さすがに彼のオリジナルだけあって、曲調とプレイ内容がピタリと一致しているのだ。

比較的大人しめな演奏が中心のこのアルバムだが、こういったなんでもなさそうな曲の、なんでもなさそうに聞こえる演奏の、なんでもない瞬間に、思わぬ殺気が見え隠れするところが面白い。

『イントロデューシング』や『ブロウィング・セッション』のような、暴走的疾走感はないが、このアルバムのグリフィンには、節度の中にも見え隠れする勢いとスピード感を感じる。
まるで、フォーマル・ウェアに身を包んだ紳士の懐には、キラリと光るナイフが忍んでいるかのように。
隠しているつもりでも、この時々光る“キラリ”な瞬間を逃さずに楽しむのが“通”の聴き方なのかも。
なるほど、だから“通”好みなのか。
(2004/11/17) 


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