Ao Vivo~Eu Sei Que Vou Te Amar
- Joa~o Gilberto    (Sony Music Direct)

  1. あなたを愛してしまう(Eu Sei Que Vou Te Amar)
  2. デザフィナード(Desafinado)
  3. 君は愛を知らない(Voce Nao Sabe Amar)
  4. フォトグラフ(Fotografia)
  5. ホーザ・モレーナ(Rosa Morena)
  6. バイアーナがやってくる(La Vem A Baiana)
  7. マダムとの喧嘩はなんのため(Pra Que Discutir Com Madame)
  8. イスト・アキ・オ・キ・エー(Isto Aqui O Que E?)
  9. メディテーション(Meditacao)
  10. 罪の色(Da Cor Do Pecado)
  11. グアシーラ(Guacyra)
  12. さよならを言うくらいなら(Se E Por Falta De Adeus)
  13. 想いあふれて(Chega De Saudade)
  14. 愛なき者のワルツ(A Valsa De Quem Nao Tem Amor)
  15. コルコヴァード(Corcovado)
  16. エスターテ(Estate)
  17. 平和な愛(O Amor Em Paz)
  18. 十字架のもとで(Aos Pes Da Cruz)

Joa~o Gilberto (vo,g)

1994/04/13

邦題『アコースティック・ライブ〜あなたを愛してしまう〜』。

ピアニストで作曲者でもあるアントニオ・カルロス・ジョビンとともに、ボサノバの創造者の一人、ジョアン・ジルベルトのヴォーカルとギターをしみじみと味わえる、シンプルだが聴きごたえのあるライブ版だ。

ジョアン・ジルベルトといえば、日本人に馴染みの深いボサノバ歌手(ギタリスト)の一人だろう。
なんといっても、スタン・ゲッツとの共演盤で世界的なヒットを飛ばし、日本でも馴染みの深い『ゲッツ・ジルベルト』で、ギターと歌を披露している人物という認識が、ジャズファンのみならず多くの音楽ファンの間では定着している。

さらに、2003年、2004年とつづけざまに来日し、国際フォーラムでは、たった一人でギターと歌の弾き語りを披露したことも記憶に新しい。

私は来日公演は残念ながら仕事が忙しくて行くことが出来なかったが、周囲に何人か国際フォーラムに足を運んだ人がいたので、そのときの模様はことあるごとに耳にするが、その出来ごとの一つ一つがもはや「伝説」になっているような気がする。

2003年の公演。
なんでも会場は、会場時間になっても開かず、30分以上経ってようやく入場することが出来たという。
5000人近くのオーディエンスが席に着くと、次のようなアナウンスで場内がどよめいたそうだ。
「本日はアーティストの希望によりエアコンを止めます。非常灯も消灯します。休憩もありません」

開演時間が過ぎてもジョアンは現れず、1時間以上過ぎてからようやくステージに登場。
また、別の日に行った人の話によると、開演時間が過ぎてから「アーティストは、現在会場に向かっています」というアナウンスがあったという。

さらに、パシフィコ横浜では、演奏中動かなくなってしまい、観客が拍手や手拍子で演奏を促す中、主治医と見まがうスタッフが何度かジョアンに「大丈夫か?」と尋ねる場面もあったのだとか。

この模様を観ていた人は口をそろえて、「もしかしてステージ上で死んだのではないかとドキドキした」。

このときは、かなり調子が悪かったらしく、歌声にも力がこもっていなかったそうだ。

遅刻やドタキャンは日常茶飯事。「今日の客は嫌いだ」といって演奏せずに帰ってしまった逸話もあるほど、ジョアン・ジルベルトには、奇人変人のイメージがついてまわる。
あの名盤『ゲッツ/ジルベルト』だって、スタン・ゲッツと喧嘩をして険悪な雰囲気でレコーディングがなされたという。

このようなジョアンの「変人」っぷりの片鱗が、2003年の来日では垣間見れたようだが、それでも、色々な出来ごとはあったにせよ、ステージ自体はとても素晴らしかったようだ。
体調不調で、ほとんど呟くように歌う場面もあったそうだが、それにもかかわらず、官能と陶酔の素晴らしいステージが繰り広げられたとのこと。

さらに翌年の2004年は、前年とはうってかわって最終公演では3時間46分ものステージを休みなしにこなし、45曲も演奏したのだという。

このようにハプニングの連続だった来日公演に行けなかったのは本当に残念。
せめて、彼のライブ盤を聴いて思いを馳せることにしよう。

それにふさわしいアルバムが、『アコースティック・ライヴ〜あなたを愛してしまう〜』。
1994年4月13日に、サンパウロのパラセのステージでライブ録音された音源だ。

来日公演時より10年前の吹き込みなので、声やギターのコンディションはおそらく国際フォーラムでの演奏とはかなり違うのだろうけれども、ギター一本、歌一つで臨んだライブということで、ジョアンの歌を聴いてしみじみしたいときには打ってつけの内容ではある。

ここでの、ジョアン・ジルベルトの歌唱は、静かで呟くようだが、その実、声の奥底には力強さが漲っている。しかも、穏やかなぬくもりも感じられ、とても幸せな気分にさせてくれる。

ボサノヴァというと、どうしても夏のイメージが持たれがちだが、この暖かさは、季節を問わず、いつ聴いても良いものだ。
むしろ、これから寒い季節がやってくるけれども、暖かい部屋でゆったりと寛ぎの時間に流すのもオツなんじゃないかな?

スタティックで落ちついた佇まいの奥底に潜むしたたかな力強さ。
季節に関係なく、我々を鼓舞するサムシングが彼の歌とギターに宿っている。

(2009/10/19) 

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