RACHELLE FERRELL (Somethin'Else)
- RACHELLE FERRELL

  1. You Send Me
  2. You Don't Know What Love Is
  3. Bye Bye Blackbird
  4. Prayer Dance
  5. Inchworm
  6. With Every Breath I Take
  7. What Is This Things Calles Love
  8. My Funny Valentine
  9. Don't Waste Your Time
  10. Extensions
  11. Autumn Leaves

Rachelle Ferrell (vo,p)
Terrence Branchard (tp) #6
Alex Foster (ss) #5
Wayne Shorter (ts) #11
Eddie Green (p) #1,2,3,4,5,8,9
Gil Goldstein (p,syn) #6,11
Michel Petrucciani (p) #11
Pete Levin (syn) #11
Tyrone Brown (stick bass) #1,2,3,4,5,8,9
Kenny Davis (b) #6
Staneley Clarke (b) #11 Doug Nally (ds) #1,2,3,4,5,7,8,9
Lenny White (ds) #6,11

1989/12月,1990/02月

邦題『ラシェル・フェレル・デビュー! 』。
サブタイトルが“歌うヴィーナスの神話”。

文字通り、当時は鳴り物入りでデビューした彼女のファーストアルバムだ。

当時は“8オクターブ(6オクターブ半?)の声域を持つ驚異の新人”だとか、“東芝EMIのプロデューサーが、ニューヨークのジャズクラブで発掘した、ダイアン・リーヴスにも拮抗しうるジャズ・ヴォーカルの新星”などといった話題が飛び交っていた。

くわえて、彼女の実質上のデビューステージ、1990年8月の日本のマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルのステージでも大活躍。特に夜のジャムセッションのコーナーでは、あのウイントン・マルサリスを向こうに回してに互角の(迫力では互角以上?)ステージングを繰り広げていたし、実際その姿を目の当たりにした私は、なんだかスゴイ新人が出てきたもんだと思ったものだ。

当時の私は、デビューしたての彼女に対して抱く印象は、インパクトや驚きが先行してしまい、あまり熱心に歌の表現力といった深いところまではきっちりと聴いていなかったような気がする。

というのも、最近になって改めて彼女のこのデビュー作を聞き返してみると、当時面白いと思っていたところが、すべて色あせて聴こえるのだ。

テクニックや声域はすごいのかもしれないが、なんだか頭のてっぺんでそれらの要素がクルクルと空回りしいるだけといった感じがしないでもない。
自分の中にある表現欲求と、自分の技量の引き出しとの折り合いがうまくつかないまま空回りしているような感じ。

よって、すべての曲で奇抜な表現をしているわけではないにもかかわらず、トリッキーな印象だけが残ってしまうのだ。
リアルタイムで聴いていたときの“すごい!”と思っていた印象が、そっくりそのまま“つまらない”に転化してしまい、超音波的ハイトーンのヴォーカルも“一回聴けばもう充分”という気分になってしまったのは、私の耳や好みが変化したということもあるかもしれないが、彼女の歌の表層的なテクニックは、決して普遍的なものではなかったということの証なのかもしれない。
どうも、心の深いところまでは届かないヴォーカルなのだ。

アルバムのラストには、ボーナストラックとして、“マンハッタン・プロジェクト”のライブ演奏が1曲収録されている。
ウェイン・ショーター、ミッシェル・ペトルチアーニ、スタンリー・クラーク、レニー・ホワイトといった豪華メンバーが一同に会して演奏を繰り広げられたライブの中に、彼女がゲスト参加した《枯葉》。

私はこのときのライブの映像を持っているが、映像で見る分においては、迫力姉ちゃんのパフォーマンスとして見れるので、面白い。しかし、CDで彼女の歌だけ聴くと、かなり辛いものがある。

騒音でもないが、歌ともいえない奇妙なボイスパフォーマンス空間とも言うべき内容で、構成もへったくれもない、まったくジャズのフレバーを感じることの出来ない意味不明な歌唱には辟易してしまう。
もっとも彼女の後にソロをとるペトルチアーニやショーターのソロはさすがに素晴らしいが。
ジャズの酸いも甘いも知り尽くしたベテランのソロと、デビュー直後のテクニックと表現欲求の折り合いのつかないフェレルの表現レベルの違いには愕然としてしまうほどの開きがある。

しかし、だからといって、このアルバムの内容すべてを全否定するわけでもない。
堅実なバックを務めるエディ・グリーンのピアノは良い。ツボをしっかりと押さえた職人の技が光る。
じゃじゃ馬娘の手綱を陰でしっかりと握っている名執事のような役どころといえるかもしれない。
折り目正しく、知的でスマート。時折キャッチー、さらりと自己主張も忘れないピアノだ。

ドラムとデュエットで歌う《ホワット・イズ・ジス・シングズ・コールド・ラブ》も良い。
こういうフォーマットでの掛け合いでこそ、当時の彼女の本領発揮といった感じがする。
(2003/07/05) 

Rachelle Ferrell | Jazz Blog | Cafe Montmartre

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