PORGY & BESS (Verve) |
| - Ella Fitzgerald & Louis Armstrong |
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Ella Fitzgerald(vo) Louis Armstrong(tp,vo) Russell Garcia (arr,cond) Russell Garcia Orchestra 1957/08/18,19 & 28 |
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「なんだ、サッチモ(ルイ・アームストロング)の歌が出てこないじゃないか。エラ(・フィッツジェラルド)の声も登場しないぞ。勿体ぶらずに、早くお目当てのシンガーの歌を聴かせてくれ。」 仮にそう思ったとしても、最初の《序曲》を飛ばさないで欲しい。 最初から順を追ってじっくりと聴いていって欲しいのだ。 お恥ずかしいことに、冒頭のセリフは、このアルバムを最初に再生したときの私のセリフだ。 エラの歌聴きたさに、サッチモの歌聴きたさに『ポーギーとベス』を買ったのに、なぜ2人が登場しないのだ!? そう思い、我慢できずに、曲をスキップさせてしまった。 2曲目の《サマータイム》でようやく登場したサッチモのトランペットに安堵し、エラの歌声に溜め息をついた。 しかし、こういう聴き方はよくなかった。 いや、聴き方に良いも悪いもないのかもしれないが、少なくとも、この『ポーギーとベス』の送り手が抱いた「この順番で聴いて欲しい」という意図には背いていることは確かだ。 エラにサッチモの豪華組合せのこのアルバム。 この素晴らしい2人の歌唱(とトランペット)を心行くまで堪能し、願わくば感動に打ちふるえてもらいたい。 きっとプロデューサーはそう考え、周到にアルバムの構成を練ったはずだ。 だからこそ、10分の長いオープニングをアルバム冒頭に配した。 黒人オペラ『ポーギーとベス』に親しんだ人にとっては、メドレー形式に登場する、お馴染みの「あのメロディ」や「このメロディ」から、これから展開されるであろう壮大なアルバムの音世界に期待がふくらむことだろう。 いっぽう、このオペラの楽曲に馴染みがない人にとっても、《序曲》の後に登場するエラとサッチモが描き出す感動を最大限に持ってゆくための予習と準備運動になるのだ。 しかも、この《序曲》は、かなり考えられた構成となっており、しかも、ラッセル・ガルシアによる贅を尽くしたアレンジのため、十分鑑賞に値する内容だ。 単にゴージャスなだけではなく、高い芸術性と、エンターテイメント性に彩られているアルバムなのだ。 もし、歌の入っている楽曲ばかりをピンポイントで聴いていた方(ようするに私のような人)がいらっしゃれば、改めて《序曲》もじっくりと味わって欲しい。 もちろん、後に続く歌入りの曲だけをピンポイントで取り出して聴いても、各楽曲の素晴らしい音世界を満喫できるだろう。 しかし、《序曲》を聴いてからの場合と、《序曲》を聴かない場合とでは、不思議なことに感動の深さがまるで違ってくるのだ。 私はこのアルバムの中では、ベタではあるが、多くのジャズマンが名演を残しているナンバー《サマータイム》と《ベス・ユー・イズ・マイ・ウーマン》が好きなので、ピンポイント聴きをしていたものだが、《序曲》→《サマータイム》という順番で聴いたときのほうが、断然《サマータイム》が深く染みてくる。 これはつまり、「作品」という「面」で捉えるのか、それとも「曲」という「点」で捉えるのかで、鑑賞のポイントの置き方が変わってくるからだと思う。 『ポーギーとベス』という作品中の、優れた登場人物としてエラとサッチモを捉えるのか。それとも、エラとサッチモという名手が『ポーギーとベス』を歌っているのか。 《序曲》を聴くと聴かないとでは、ずいぶんと意識の置きどころが変わってくるのだ。 当然、LPの時代には、当り前のように、順番通りに聴かれていたのだろう。 しかし、CDが主流の今、リモコンのワンプッシュで曲を飛ばすことが出来、iTunesやiPodに落とせば、シャッフルも思いのままという便利さを享受出来るがゆえ、かえって当たり前の素晴らしさを見落としてしまっていたのだ。 ヒット曲にいたっては、アルバム単位ではなく、曲単位で「ダウンロード消費」が当然の今日、この作品のように「面聴き」をしてこそ、素晴らしさを堪能できるアルバムは、ますます敬して遠ざけられてしまうのではないのだろうかと、微妙に危機感を持つ私。 それにしても、このアルバムは深い。 少なくとも、気軽に聴こうという気にはなれない。 オペラを鑑賞するときのように、鑑賞するマインドも少々ドレスアップして「聴きモード」のエネルギーを高めなければならない。このようなことは、年に数度あるかないか。 しかし、だからこそ、「よし、聴こう!」と思った際は、せっかくなのだから《序曲》から順を追って聴いてみて欲しいと思う。 より深い感動と充実した時間をこのアルバムから得るためには、是非、襟を正して聴きたい。 たまにしか聴かないアルバムだとしても、豊かで深くて素晴らしい音楽が家の片隅に眠っている。この素晴らしアルバムを味わって感動したという事実を、自分の中のどこかに、心の隅っこでもいいから、大事にしまっておきたい。 そんな大切な宝物のようなアルバムが、エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングが共演した『ポーギーとベス』なのです。 |
| (2002/03/19) |
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