THE TRANCE (Prestige) |
| - Booker Ervin |
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Booker Ervin (ts) Jaki Byard (p) Reggie Workman (b) Alan Dawson (ds) 1965/10/27 |
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一言、「ぷぁ〜」なアルバムだ。 「貧乏」あるいは「貧弱」の"poor"という意味ではない。 フレーズの語尾を“ぷぁ〜”としゃくり上げるように吹くアーヴィンを、これでもかというほど楽しめるアルバムなのだ。 ときに「ぷぉ〜」と語尾を下げる箇所もあるが、とにかく、この気持ちの良いアクビのような「ぷぁ〜・ぷぉ〜」の多用と、滑らかで流麗なアドリブフレーズの目立つ本アルバムは、他のアーヴィンの諸作とは一線を画する。 アーヴィンの吹くテナーサックスは、 「ぶふぉっ」とか、 「べふぇっ」といった、 どちらかというと詰まったニュアンスが多い。 もちろん吹くフレーズにもよるが、8分音符、16分音符と細かいフレーズになればなるほど、語尾の詰まった音になることが多い。 この独特の詰まり具合が、アーヴィン好きにはたまらないわけだ。 しかし、このアルバムのアーヴィンは、「詰まったアーヴィン」ではない。 意識的に長めの音符を吹くよう心がけているのか、アドリブのフレージングが非常になめらか。 音色も他の作品の音よりも透き通っている。 そういった意味では、アーヴィンの諸作の中では、異色なアルバムともいえる。 特に、1曲目に顕著なのだが、アーヴィンは、モーダルな演奏に、自分流のアプローチを試みていたのだろう。 極力、メリハリや細かい動きは殺す。 抑揚を抑えた中に、熱気をはらんだブロウとはまた違う、別種の高揚感を生み出そうという試み。 フレージングも非バップ的で、ハーモニックマイナースケールを多用することによって、エキゾチックなニュアンスを意識的に出そうとしている。 メリハリは最小限、出来るだけストイックに。 アドリブはスケールに基づいたメロディアスなフレーズでアプローチ。 一聴、コルトレーン的かもしれないが、似て非なる、非コルトレーン的なアーヴィン流のモーダル・アプローチといえる。 このアプローチは、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』の《ソー・ホワット》にきわめて近い発想だ。 《ザ・トランス》は、アーヴィン版l《ソー・ホワット》といってもあながち間違いではないだろう。ただし『カインド・オブ・ブルー』に収録された《ソー・ホワット》限定だが。 次曲の《スピーク・ロウ》にも同様のアプローチが試みられているが、タイトル曲ほど抑揚は殺していない。 出るところは出ているし、かっ!と熱くなる瞬間も多い。 このコントラストがたまらない。 《ザ・トランス》も、《スピーク・ロウ》も、決して短くはない演奏時間だが、流麗なアーヴィンの音色とアドリブフレーズに聴き惚れているうちに、あっという間に時間が過ぎ去ってしまう。 反対にラストの《グルーヴィン・アット・ジャンボリー》は、あっという間に演奏が終わってしまうのでストレスが残るほど。 それほどアーヴィンの、伸びやかな音色と、語尾を「ぷぁ〜」と揺らす音は気持ちがいい。 ラスト曲《グルーヴィン・アット・ジャンボリー》は、アーヴィンがヨーロッパ滞在中によく演奏したバルセロナにあるクラブに捧げた曲なのだそうだが、この曲のテーマの旋律は、ほとんどチャーリー・パーカーの《ビリーズ・バウンス》じゃないか(笑)。 最初の2小節目までをディフォルメさせ、強引に繋ぎ合わせて一丁上がりなテーマ。 急ごしらえっぽさがプンプンと漂うこのテーマだが、強引に同一フレーズを繰り返して、テーマとしての体裁を繕ってしまっているところが面白い。 こんなところもアーヴィンらしく、アーヴィンファンにとっては微笑ましい一瞬でもある。 ただし、中途半端な箇所で、演奏がフェイドアウトしてしまうところには少々不満が残る。 このアルバム『ザ・トランス』は、1965年、アーヴィンがヨーロッパ滞在時、ミュンヘンで録音されたもの。 まどろみと躍動感の奇妙な合一感を楽しめるこのアルバム。タイトルの「ザ・トランス(夢うつつ)」とは、なかなか巧いネーミングだ。 タイトル通り、「夢現なアーヴィン」の決定盤だ。 |
| (2008/05/18) (加筆修正 2009/12/10) |
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