THE BOOK COOKS (Bethlehem)
- Booker Ervin

  1. The Blue Book
  2. Git It
  3. Little Jane
  4. The Book Cooks
  5. Largo
  6. Poor Butterfly

Booker Ervin (ts)
Tommy Turrentine(tp)
Zoot Sims(ts)
Tommy Flanagan(p)
George Tucker(b)
Danny Richmond(ds)

1960/04/06

ブック・クックス。
まず、その語感が良い。
促音の「ッ」が二回続き、韻を踏んでいるようだが、この「ッ」の詰まり具合、そして「ク」の発音も、きっと「く」とベタに発音をするんじゃなくて、「ッ(ヵ)」という感じで消え入りそうに発音するのだろう。この「ッ(ヵ)」の詰まった語感がなんともいえずに、どうしようもなく粘っこくてファンクだ。
いや、もしかしたら、このアルバムは、ファンク以上に、粘っこくて、泥臭くて、底なしにまっ黒なのかもしれない。

パーソネルを見る。
ズート・シムズにトミー・フラナガン。
スイング・テナーの大御所と、気品のある抑制されたタッチが魅力のピアニストだ。この二人の名前から連想されるサウンドは、上品にスイングする軽快な4ビートといったところか。

ところがどっこい、ここでのフラナガンのピアノは、かなりアーシーだ。
特に1曲目。不協和音に近いクラスターを、ちょっと乱暴に叩きつけたり、想像以上に粘っこい「間」を設けている。優雅さはなく、むしろギラッとした凄みを垣間見る感じ。

ズートのテナーも、ここではかなり煤(すす)けている。
それに加えて、リズム陣は、ミンガス特有の泥臭いリズムを彷彿させてしまうコンビだと思う。
ジョージ・タッカーの、後ろに引っ張られるような重たいベース。「ブチッ!」としたアタック感もたまらない。眩暈がするほど強烈なウネリだ。
1曲目のベースのイントロを聴いただけで、「まっ黒けっけ」な世界に引きずりこまれてしまう。

このアルバムは、泥臭くて素朴なメロディの曲が多い。
1曲目の《ザ・ブルー・ブック》、それに3曲目の《リトル・ジェーン》や、5曲目の《ラルゴ》あたりは、どっかりと重心が低く、まるで深く地の底まで食い込んでいるような感じだ。メランコリックさも漂っている。
そして、極めつけは、まるで棒を切ったように、まったく流暢ではないブッカー・アーヴィンの、詰まったようなトーンのテナー。
ああ、なんてアーシーなんだ。

アーヴィンは、微妙なニュアンスや抑揚ををつけないタイプのテナーを吹く。
ヴィブラートなどをかけずに、棒のように音を「ブーッ」と伸ばしっぱなしな、少し野暮ったい吹き方をする。
そこが彼の魅力なのだが、このような「棒吹き」のスタイルに合った曲ばかりが配置されているのが、このアルバムの魅力なのだろう。なにせ、ラストのナンバーを除けばすべてが彼のオリジナルなのだから。
まさにスタイルと曲想が、気持ち良いほど一致しているのだ。

このアルバムを聴いているうちに、口許が緩んでくれば、ジャズの底なし沼の中に落ちつつある証拠。そして、こうなったら最後、全身泥だらけになり、二度と再び泥沼の中からは、這い上がれないのだ。

(2002/02/28) 

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