THE BILL EVANS ALBUM (CBS) |
| - Bill Evans |
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Bill Evans (p) Eddie Gomez (b) Marty Morrell (ds) 1971/05/11,20 & 06/09 |
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『ザ・ビル・エヴァンス・アルバム』は、当時流行りの、フェンダーローズ・ピアノにもチャレンジしたことで有名なアルバムだ。 もちろん「流行りの楽器を自分もやってみましたー」的な内容ではなく、きちんとピアノとエレピの音色や、演奏が生み出す効果の違いを把握した上での演奏であることは言うまでもない。 そして、結果的には両楽器が持つそれぞれの素晴らしさを味あわせてくれる、素晴らしい内容に昇華された。 既にワン・アンド・オンリーの境地に達していた彼のアコースティックピアノのスタイルだが、これにエレピが加わることによって表現に幅が生まれた。 理知的な響きを生むのがアコースティックだとすると、エレピから生み出される響きは、蕩けそうなまろやかさと言うべきか。 空間全体を柔らかい空気で覆うような、儚くも夢見心地な響き。 この時間の中にまろやかに浸透してゆくようなエレピの響きと、そこから覚醒を促すかのようなアコースティックピアノの響きをエヴァンスは見事に弾き分けている。 全編「ピアノ+ベース+ドラム」と、音色に変わり映えのしないピアノトリオの状態が延々と続くのも、演奏さえよければ何も問題はないのだが、エレピという同じ鍵盤楽器ながらも、まったく性格の違うもう一つの楽器を効果的に使い分けることによって、時として感じがちな「いつまでも、どこを切ってもピアノトリオ」な状態に、新鮮な風を吹きこんでいる。 まぎれもなくエヴァンスの新境地だ。 冴えないジャケットではあるが、それと反比例するかのように、中身の音は充実している。 CBSに移籍した第一段のアルバムということもあり、演奏曲はすべてエヴァンスのオリジナル。代表曲《ワルツ・フォー・デビー》の再演や、ニューヨークに出たばかりの頃に書き下ろし、ズート・シムズの演奏でライブが大いに盛り上がったという《ファンカレロ》など、魅力的な曲によって占められている。 また、はみがき会社のCM用に書き下ろしたテーマ《コムラード・コンラッド》や(結局は不採用になったようだが)、12音技法を用いながらも、それを露骨に感じさせないような内容に作曲したという《T.T.T(Twelve Tone Tune)》、ブルースながらもブルース的な構造を注意深く改変している《リ・パーソン・アイ・ニュー》など意欲作揃い。 エヴァンスの曲には、裏ではかなり手の込んだ技法が用いられていても、表向きはスンナリと聴けるもののが多い。 それが彼一流の美意識のあらわれなのだろうが、このアルバムでは、エヴァンス流美意識に貫かれたナンバーをたっぷり楽しめることだろう。 特に、冒頭の《ファンカレロ》が白眉で、前半のエレピの蕩ける世界と、後半のビシッと締まりのあるアコースティック・ピアノの世界への移行がいつ聴いてもスリリング。 セピア色のピントのボケた写真の世界から、いつしか現実の世界に引き戻された覚醒感。あたかも停滞した時間を描写するかのごとくのエレクトリックピアノと、キビキビと時間の中ヲハードボイルドに突き進むアコースティックピアノ。 このコントラストと演出がたまらない。 エレピと、アコースティックの特性の違いを上手に活かした演奏といえるだろう。 この曲が1曲目になければ、ずいぶんとこのアルバムの印象は変わっていたに違いない。 また、エレピならではの“まったりさ”を活かした《ワルツ・フォー・デビー》の再演も聴きものだ。 音楽評論家の中山康樹氏は、エヴァンスの最高傑作を挙げよと言われたら、「しばし考えるふりをし、しかし毅然たる態度でこのアルバムを挙げよう。」と著書『エヴァンスを聴け!』に記しているが、たしかに音楽的な充実度は他の諸作よりも群を抜く内容だと言ってよい。 |
| (2009/11/25) |
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