SIESTA (Warner Bros.Records)
- Miles Davis/Marcus Miller

  1. Lost In Madrid Part 1
  2. Siesta/Kitt's Kiss/Lost In Madrid Part 2
  3. Theme For Augustine/Wind/Seduction/Kiss
  4. Submission
  5. Lost In Madrid Part 3
  6. Conchita / Lament
  7. Lost In Madrid Part 4/Rat Dance/The Call
  8. Claire/Lost In Madrid Part 5
  9. Afterglow
  10. Los Feliz

Miles Davis (tp)
All other instruments played by Marcus Miller except:
John Scofield (acoustic-g) #2
Earl Klugh (classical-g) #8
Omar Hakim (ds) #2
James Walker (fl) #5
Jason Miles (syn-programming)

1987/01/.date unknown(LA) #1,4,5,6,7,8,9,10
1987/01/07 & 08(NY) #2,3


同名映画のサウンドトラックだ。

マイルスのトランペットはもの悲しく、孤独と寂寥感に溢れており、過去に録音した名作『スケッチ・オブ・スペイン』に匹敵する吹奏と言っても過言ではない。

スパニッシュなテイストをやらせても、マイルスの表現は一級品なんだな、と改めて思う。

しかし、私はどうしても、この作品、「マイルス・デイヴィスのリーダー作」としては聴けないんだよね。

ギターにジョン・スコフィールド、ドラムスにオマー・ハキムが部分的に参加しているが、ほとんどがマーカス・ミラーの打ち込み&プレイ。
明快すぎるシンセの音色の選択と、分離の良すぎる音と音との距離感現代風といえば現代風かもしれないが、少々安っぽく聴こえてしまうことも確か。

録音当時の1987年は最新のテクノロジーを駆使したデジタルミュージックだったのかもしれないが、早くも色褪せっぷりが凄まじい。

オーケストラアレンジをする過程においての、簡単な音のメモ、言ってみれば創作過程のデモテープを聴いている錯覚にすら陥ってしまう。

使用している楽器がアコースティックかデジタルかの違いはあるので、比較しても仕方がないのかもしれないが、ギル・エヴァンスがアレンジした『スケッチ・オブ・スペイン』で聴けるような、すべての楽器が渾然一体となって溶け合うような重層かつミステリアスな要素が感じられない。

しかし、その逆で、適度な音と音の明確な隙間が、一抹の寂寥感を漂わせていることも確かなので、この試みはそれはそれで功を奏しているのだろう。

マーカス制作のオケにあわせて、マイルスがトランペットを吹いた作品なので、「マーカス・ミラーのスパニッシュタッチのリーダー作のスペシャルゲストとしてマイルスが友情出演した」という解釈で聴くのが正しい。

ま、これは私の勝手な好みなのだが、マイルスのラッパって、さまざまな楽器が折り重なった混濁した分厚いバックのオケから浮かび上がるからこそ映えるし、カッコいいんじゃないかと思うのだ。

エレクトリック時代のマイルスや、ギル・エヴァンスのオーケストレーションの作品を聴けば、それは明らかだ。

だから、マーカスの作った分離の良すぎる明快なオケは、マイルスのハードボイルドな寂寥感漂うトランペットを100パーセント活かしきっているとは思えないのだ。

しかし、だからといって、マーカス作のオケの出来をもってして『シエスタ』を全否定するつもりは毛頭ない。

これから買う人、既に持っている人のために、この作品の聴き方のコツを書いてみましょう。

脳内イコライザーとフィルターをフルに稼動させ、マイルス・デイヴィスのトランペットのみを追いかけるべし!

マイルスのラッパは、バックのチープなオケとは無関係に一人屹立し、超然と孤独を演じている。

マイルスのラッパだけでもを聴く価値のある作品ではあるのだ。
次いで、《オーガスティンのテーマ》で、エコーがギンギンにかかっているマーカスの吹くバスクラリネットも、なかなかいい味を出している。

ジャズとして接するよりは、特殊な空気を醸し出す(それもかなり冷ややかで絶望的な)クオリティの高いインストゥルメンタル・ミュージックとして聴くと良いのではないかと思う。
(2005/10/27) 

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