QUIET KENNY (Prestige) |
| - Kenny Dorham |
|
|
Kenny Dorham (tp) Tommy Flanagan (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds) 1959/11/13 |
|
|
|
ケニー・ドーハムは、アメリカ本国ではさほど有名でも評価もされていないそうだが、微妙な陰影と情緒を絡ませる彼のトランペットは、日本ではファンの多いトランペッターの一人だ。 彼のトランペットは、たとえば、クリフォード・ブラウンのような輝かしい音色ではない。どちらかというと、ちょっとひしゃげた音色で、訥々と吹くプレイヤーだ。 ところが、この微妙な陰影の付き具合が、意外と心の襞に染みてくるのだ。 その代表とでも言えるべきアルバムが、これ。 邦題『静かなるケニー』。 このドーハムのワン・ホーンによるアルバムは、彼のトランペットの魅力を余すことなく伝えている。 独特の、ちょっと拉げた素朴な音色。 じわりと染み込んでくる心温まるプレイ。 曲によっては、ちょっと侘びしい感じもするが、そこが逆に魅力なのだ。 このアルバムのドーハムのプレイを、スケールの小さい「四畳半トランペット」と評する向きもあるようだが、何が何でもスケールが大きければ良いというわけでもないだろう。 たとえば、《マイ・アイディアル》のように、ほんわりと心の寒い部分を暖めてくれる炭火のようなこの心温まるラッパはどうだ。 美しいメロディを、たどたどしささえも漂わせながら吹く、この「四畳半ラッパ」の感動。 「四畳半」だからこそ感動なのだ。 スケールの大きな「宮殿ラッパ」で吹いたら、曲の持ち味がブチ壊しになってしまうのではないか? 小津安二郎の映画の世界に、ハリウッド映画的な要素を求めても仕方がないだろう。 このアルバムのドーハムのプレイが、仮に「四畳半」で、スケールが小さいとしても、それはアルバムの価値を高めることはあっても、損ねることは全く無いはずだ。 だからといって、彼は、決してスケールの小さなトランペッターだというわけでもない。 もとより、ケニーは、初代ジャズ・メッセンジャーズのトランペッターを勤めたこともあり、当然、吹こうと思えばバリバリと吹けるトランペッターなのだ。 ブルーノートの『アフロ・キューバン』や『ウナ・マス』などのプレイを思い出していただければ、納得いただけることだろう。拉げた音色は相変わらずだが、それもまた、彼ならではの味わい。 たまたま、このアルバムは訥々とした味わい深いプレイがメインとなっているだけのこと。そして、この味わいは、たとえ「四畳半」的だとしても、素晴らしい温もりを伝える内容となっていることには変わりはない。 派手な演奏は無いし(強いて言えば、《蓮の花》のアート・テイラーがエキサイティング)、地味といえば地味だが、じわりと染みてくる渋いアルバムだ。 端正、かつ的確なサポートをするトミー・フラナガンのピアノも、このアルバムのもう一つの聴きどころだ。 |
| (2002/09/13) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |