MY FUNNY VALENTINE (Columbia)
- Miles Davis

  1. Introduction By Mort Fega
  2. My Funny Valentine
  3. All Of You
  4. Go-Go (Theme And Re-Introduction)
  5. Stella By Starlight
  6. All Blues
  7. I Thought About You

Miles Davis (tp)
George Coleman (ts)
Herbie Hancock (p)
Ron Carter (b)
Tony Williams(ds)

1964/02/12

マイルス・デイヴィスは、ホント、人が悪い。

『フォア・アンド・モア』と同日に録音されたライブ盤、『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』を聴いてみよう。

おまえのオカしな顔は、
このオレを心の底から笑わせてくれる。
ギリシャの彫刻にはほど遠く、
口もとも少しだらしなく、
言葉遣いもスマートじゃない。
でも、おまえはそのままでいい。
そうすれば、オレにとっては、
毎日がヴァレンタインだからね。

こんなことを面と向かって、深刻な口調で言うんだぜ。
この世の終わりのように絶望的な表情で。
ライトを落として、ほとんど暗闇の中で、囁くように。

言われた女性はたまったもんじゃないだろう。

とろけるような甘い声で歌うチェット・ベイカーはどうだろう?
しっとりとダンディな声で語りかけるフランク・シナトラはどうだろう?

いずれにしても、《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》という曲は、イイ男が、それなりのムードで囁かないと、女性からはボコボコに殴られかねない危うい曲だ。

だからこそ、ジャズマンは粋でなければならない。
粋さを欠いたブ男に《マイ・ファニー》をやる資格はないのだ。

もっとも、この曲、もとはといえば、女性が男性に向かって語りかける曲らしいが…。

『クッキン』においてはミュートをつけてピリッと小粋に《マイ・ファニー》をキメるマイルスも良いが、闇のドン底に突き落とす重たいオープン・ミュートで絶望を囁くマイルスも素晴らしい。

マイルスが心ゆくまで主役を演じた後は、三枚目役のジョージ・コールマンが、ありきたりなセリフを言いながらも、一生懸命場をフォロー、次いで、心優しく機転も利くハンコックが如才なくムーディな場を維持させる。

素晴らしいストーリー展開ですね。

突撃ぃ〜!ドッカーン!な『フォア・アンド・モア』にばかり脚光が集まりがちな、1964年2月12日、ニューヨーク・フィル・ハーモニックで行われたライブだが、『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』のほうも、やはり良い。
ま、同じ日の演奏だから、極端に悪い演奏はないのだろうが。

“絶望のヴァレンタイン”に次いで登場する《オール・オブ・ユー》に、ホッとため息。

愛だの恋だのを通り越して、なにやら哲学的な境地にまで昇華されてしまったんじゃないかの《星影のステラ》に、ハァ〜っとため息。

そして、このアルバムの中では一番エキサイティングな《オール・ブルース》。
ここでは、ロン・カーターが頑張っている。
だからこそ、アクセントに変化をつけ巧妙なドラミングを施すトニーのドラミングも生き生きと輝く。

じっくりと聴けば聴くほど、魅力溢れる盤だ。
(2004/08/12) 


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