MILES DAVIS IN EUROPE (Columbia) |
| - Miles Davis |
|
|
Miles Davis (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds) 1963/07/27 |
|
|
|
『マイルス・イン・ベルリン』や『プラグド・ニッケル』を聴き慣れた耳で『マイルス・デイヴィス・イン・ヨーロッパ』に聴き返すと、このアルバムの演奏は、かなりオーソドックスなハードバップに近いものに感じる。 新生マイルス・クインテットが始動初期の演奏ゆえ、ショーター加入後に色濃くなるミステリアスな要素は皆無だが、そのぶん突き抜けるような爽快さがあり、気軽に楽しめる盤だといえる。 新しい息吹きを感じるのは、トニーのシャープなドラミングと、ハンコックのピアノが醸し出す瑞々しい響きだろう。 逆に、ロン・カーターのベースが、オーソドックスなラインで、後年になって際立ってくる“ある種の怪しさ”の境地にまで至っておらず、またジョージ・コールマンのアウトをしない健康的にエキサイティングなプレイが、従来のハードバップジャズの延長線上の文脈で安心して聴ける。 ウェイン・ショーター参加後に、このクインテットの演奏から立ち込める“ある種の妖気”をスッパリ差し引き、エキサイティングな成分だけが綺麗に残っているのが『マイルス・デイヴィス・イン・ヨーロッパ』なのだ。 ショーター加入後の演奏内容に慣れてから『イン・ヨーロッパ』にさかのぼると、何度もライブを重ねるごとによって、演奏のクオリティ深めていったのだなということが分かり興味深い。 《マイルストーンズ》や《ウォーキン》のようにアップテンポの演奏の素晴らしさは言うまでもないが、それ以上に『イン・ヨーロッパ』ではマイルスのバラードプレイに注目してみよう。そう、冒頭の《枯葉》だ。有名な『サムシン・エルス』の《枯葉》の面影がチラホラと見え隠れしつつも、新しい曲のムードを再創生しようとするマイルスの意気込みが感じられる。 顕著なのが、テーマの冒頭の数音だ。 この時期のマイルスが好んで吹いている、一気呵成にメロディを畳みかけるように上昇させる、出だしの“痙攣フレーズ”が、シャープで痺れる。 そう、マイルスは、かつての名演のムードを引き継ぎながらも、慎重に《枯葉》という曲の破壊&再構築作業に取りかかっているのだ。 情緒的な趣きよりも、理知的な雰囲気が前面に出たハンコックのピアノが、このグループにおける《枯葉》の新しい方向性をチラリと垣間見せるが、まだまだロン・カーターのベースラインがチェンバースのラインに近いオーソドックスさ。 トニーのドラミングにフィットする、メロディックでユニークなラインはまだ生まれてはいないが、逆にいえば、ロンの独特なベースラインは、マイルスのクインテットで生まれ、醸成されていったものだということが、この時期の演奏と、その後の演奏を聴き比べればよく分かる。 『マイルス・イン・ヨーロッパ』は、『マイルス・イン・ベルリン』で感じられる抽象度の高さは感じられないものの、そこにいたるまでのスタート地点を『マイルス・イン・ヨーロッパ』の《枯葉》で確認することが出来、それはそれで興味深い演奏だ。 この手法、ムードは、日夜重ねられるライブによって少しずつブラッシュアップされ、より一層研ぎ澄まされた『マイルス・イン・ベルリン』へと昇華してゆくのだ。 |
| (2009/03/10) (加筆修正:2009/12/27) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |