KENNY DORHAM AND THE JAZZ PROPHETS VOL.1 (ABC)
- Kenny Dorham

  1. The Prophet
  2. Blues Elegante'
  3. DX
  4. Don't Explain
  5. Tahitian Suite

Kenny Dorham (tp)
Frank J.R. Monterose (ts)
Dick Katz (p)
Sam Jones (b)
Arthur Edgehill (ds)

1956/04/04

“のり弁”ですね。
失礼な言い方かもしれないけど、愛着をこめて。

このアルバムは、私にとっては“のり弁当”。
“のり弁”って、なんとなく嬉しくないですか?
食べるとき、「よーし喰うぞ!」とハシをつける2秒前。あるいは、冷えたのり弁をレンジで暖めたときに漂ってくる、なんとも食欲をくすぐるい いニオイ。
ささやかだけれども、なんだか嬉しい。
この感覚分かるでしょ?

のり弁って、特に高い食べものというわけでもないし、グルメを気取るメニューでもない。
「オレ、昨日の夜は彼女とのり弁喰ってさぁ」と自慢できるようなシロモノでもないし、むしろ貧乏臭いとまでは言わないが、ゴージャスの対極。
圧倒的に庶民的。
昔、母親が作ってくれたのり弁でもいいし、弁当屋で売られているのり弁でもいい。
ハズレって少ないでしょ?

のり弁は、たまに食べると、とてもおいしい。
かといって、2日連続でも、別に「まぁ、それはそれでいいんじゃない?」
と広い心で許せる食べ物だ。

ケニー・ドーハムというトランペッターが醸し出す味って、まさにそれなんですよ。
とりたてて派手でもないし、すっげぇ〜!と驚くようなプレイをする人というわけでもない。

好きな食べ物は?ときかれて、真っ先に「のり弁!」と言う人はそんなに多くはいないと思う。
同様に、マイルスやブラウニーといった寿司やカレーといったポピュラーな定番や、フォアグラのような高級メニューを真っ先に挙げる人はいるが、真っ先にケニー・ドーハムといったのり弁を筆頭に挙げる人は少ないと思う。

しかし、寿司やフランス料理が好きな人も、のり弁は好きな可能性は高い。
優先順位が1番や2番じゃないだけだ。
きっと、意識の中の5番目から14番目ぐらいの間に不動で位置しているはずなんだけど、あまりにも「のり弁が好きなこと」が当たり前すぎて、意識に上らないだけなのだ。
だから、ジャズ・マニアの意識の中のどこかにはドーハムはいるはずだ。

「今日はのり弁でも喰うか」という気分で、「今日はドーハムを聴くか」と、軽い気分でアルバムをかけても、ドーハムは必ずこちらの期待にこた えてくれる。
のり弁が確実に食欲を満たしてくれるように、ドーハムも確実にリスナーのジャズ心を満たしてくれる。
のり弁が飽きないように、ドーハムも聴いてて飽きない。
聴けば聴くほど味が出る、といった意味では、スルメ的な要素も高いジャズマンだと思う。

そんなドーハムの作品の中では、おそらくベスト3にはいるんじゃないかと思っているのが、コレ、『ジャズ・プロフェッツ』。
ジャズ・メッセンジャーズ退団後に結成したグループ、ジャズ・プロフェッツとしての録音だ。

収録時間も30分前後と、腹八分目なところも飽きずに付き合える大きな理由かもしれない。
しかし、腹八分目とはいえ、こののり弁は、おかずとともにとても充実しているし、味も確かだ。

特に、J.R.モンテローズといった、地味だけれども定番的なおかず、弁当でいうと、玉子焼きや、タコさんウインナーの存在が、ドーハムというのりご飯との相性が抜群に良く、互いを良い形で、互いを引き立て合っている。

だから、『ジャズ・プロフェッツ』は、全国の“のり弁好き”必携(?)のアルバムなのだ。

ちなみに、このアルバム、原盤はABCというレーベルだが、最近発売されているCDは“ルピジウム・クロック・カッティングによるハイクオリティ・サウンド”だそうで、細かいことはよく分からないが、要するに音がとても良くなっている。
特に、サム・ジョーンズのベースが、リアルに浮かびあがり、ギザギザ、ゴリボリと迫力ある音色になって蘇っているのが嬉しい。
(2002/07/06) 


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