FOUR AND MORE (Columbia) |
| - Miles Davis |
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Miles Davis (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams(ds) 1964/02/12 |
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トニー・ウィリアムスのドラミング、ことシンバルワークの特異性を体感し、エネルギッシュな躍動感を味わいたければ、真っ先にオススメしたいのがマイルスの『フォア・アンド・モア』だ。 まずは冒頭の《ソー・ホワット》を聴いてみて欲しい。この演奏がとにもかくにも強力にプッシュしたいナンバーだ。 トニーがドラムスで、ロン・カーターがベース、ハービー・ハンコックがピアノというリズムセクションのライブ版《ソー・ホワット》は、『イン・トーキョー』や『イン・ベルリン』、さらにはコンプリート・ボックスの『ライブ・アット・ザ・プラグド・ニッケル』でも聴くことが出来る。 むしろこれらの演奏のほうが、テナーサックスがサム・リヴァースやウェイン・ショーターだったりするので、ジョージ・コールマンがテナーサックスの『フォア・アンド・モア』よりも怪しさ倍増で演奏内容は濃い。 しかし、ジョージ・コールマンがテナーを務める『フォア・アンド・モア』から感じられるハードバップを一歩突き抜けた爽快感は、他のライブバージョンでは味わえぬものであると同時に、トニーのシンバルワークがより明瞭に捉えられているというメリットがある。 何が違うのかというと、シンバルの音色。音の粒立ちだ。 他のライブの《ソー・ホワット》のシンバルの音が「シャン・シャン・シャン」と金属の音だとすると、『フォア・アンド・モア』のシンバルの音は「カツン・カツン」と木のニュアンスが強い。 つまりスティック先端のチップの音が聴こえてくるようで、これは録音の問題や、シンバルの叩く位置の違いもあるのだろう。 シンバルはトップ(中心部)に近い位置になればなるほど、残響音が短くなる。 シンバルの外淵側を叩くと、♪カーン とか ♪シャーン という音だが、中心部に近づけば近づくほど、♪カン とか ♪カツン という残響音の短い音になる。 この残響音の少なさが、トニーのシンバルレガートのパターンが分かりやすく耳に届いてくるのだ。 つまり彼のシンバルレガートはワンパターンではないということ。 惰性で♪チーンチキ・チーンチキと同じパターンで叩くのではなく、トニーは、1小節ごとに違うパターンでシンバルを叩いている。 このパターンの違うシンバルワークが、残響の少ない音で立体的に、驚くべき推進力で味わえるのが『フォア・アンド・モア』の魅力なのだ。 このドラムパターンの組み立ての素晴らしさと、何も怖いものはないぞとばかりの若さにあふれたエネルギッシュな勢いはいつ聴いても大興奮。 以前、私の番組に、ジャズドラマーの大坂昌彦さんをゲストにお呼びして、トニー・ウィリアムスのドラミングについてのお話をお伺いしたことがある。 さすが、ドラマーならではの視点で詳しくトニーのドラミングを分析していただいたのだが、その中で興味深い話の一つが、トニーのシンバルレガートはロイ・ヘインズの影響を受けているということだった。 ロイ・ヘインズは若い頃はお金がなくて、ドラムセットをフルで揃えることが出来なかった。だから、シンバルの叩き方に変化をつけて自身のドラミングを工夫したのだという。 ロイ・ヘインズもトニー・ウィリアムスもボストンの出身。 年下のトニーにとってのロイ・ヘインズは憧れのヒーローだった。 そのヒーローが叩きだすドラミングをトニーは吸収し、発展させた形が、あのようなシンバルワークへと繋がったのだそうだ。 また、それだけではなく、当時のトニーの反骨精神もそうさせたのではないかという指摘もあった。つまり、ワンパターンに「チーンチキ・チーンチキ」とシンバルを刻むマンネリに対してのアンチテーゼ。 感性鋭く、プライドも高かったトニーは、「いままでと違った新しいドラミングで勝負してやる」と思っていたことは想像に難しくない。 このような背景が、あの熱く燃える《ソー・ホワット》のドラミングを生み出しているのだという予備知識をもって『フォー・アンド・モア』を聴くと、より一層鑑賞の愉しみが増してくると思いませんか? ジャズマニアにとっては「耳タコ盤」の一枚だろうが、こういう予備知識をもって再度鑑賞してみると、また新たな角度から楽しめるかもしれない。 また、ジャズの入門者にも安心してオススメしたいアルバムでもある。 むしろ、無難なピアノトリオのようなアルバムから入門するよりも、このような躍動感にあふれたエキサイティングなジャズから入門したほうが、一気にジャズの魅力を浴びることが出来るのではないか? 入門者にとってはアダルトなイメージの強いジャズかもしれないが、このような先入観がもしあるとすれば、このアルバムを聴けば、ものの数分でそのような思い込みは綺麗に払しょくされることだろう。 ロックなみにエネルギッシュ、いや、もしかしたらロック以上のエネルギーとバイタリティ、そして知的な目線に貫かれた栄養がたっぷりの音楽だということを体感できるはずだ。 |
| (2009/11/24) |
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