'ROUND ABOUT MIDNIGHT AT THE CAFE BOHEMIA (Blue Note) |
| - Kenny Dorham |
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Kenny Dorham (tp) J.R.Monterose (ts) Kenny Burrell (g) Bobby Timons (p) Sam Jones (b) Arthur Edgehill (ds) 1956/05/31 |
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ケニー・ドーハムのトランペットは 鉛色だ。 金属は金属でも、決して光沢のある「金」ではない。 鈍いつや消しの色を放つ鉛。 ミュートをはずしたマイルスの音色も、重い鉛を思わせる音色だが、ドーハムの場合は、さらにそれを拉(ひしゃ)げさせたかのような、なんとも味わい深い音色を発する。 華麗なイメージの強いトランペットだが、その音色ゆえ、ドーハムのトランペットは、むしろ地味かもしれない。 高音域をパリパリと勢いよく吹くものでもないし、全体の雰囲気はダークで、くすんでいる。 そこが、強烈に“ジャズ”を感じさせる要素だ。 華やぎの要素が少ないぶん、コンサートホールは似合わない。むしろ、狭くて紫煙の漂う、薄暗い地下のクラブがよく似合う。 不健康で、退廃的な匂いが常につきまとう密室の中で ニビ色のトランペットが咆哮、炸裂。 そのようなイメージが濃厚に漂うのが、カフェボヘミアでのライブだ。 バド・パウエルの《テンパス・フュージット》と“異名同曲”の《メキシコシティ》のエキサイティングさ、《ニューヨークの秋 》は、情緒やロマンス以前に、甘美な崩壊への誘いだ。 もうこれに聴き入ってしまったら引き返せない。後に戻れない。 このアルバムに魅せられたら最後、退廃的かつ快楽的なジャズの地獄へとズブズブとゆっくりと沈んでゆくほかはない。 J.R.モンテローズの饐えたサックス、甘美な毒を秘めたケニー・バレルのギター、気がつくと、いつのまにか緩やかにツボを刺激しているボビー・ティモンズのピアノ……。 そして、あまり語られることはないのだが、アーサー・エッジヒルのシャープなドラミングこそが、このバンドに独特な雰囲気をもたらす要なのではないかと感じる。 まるで、後年マイルス・デイヴィスの元で大活躍するトニー・ウィリアムスのドラミングを予言しているかのようなドラミングだ。 このように、各々ジャズマンのプレイはもちろん素晴らしいのだが、 そんな彼らが一丸となった上にかぶさる 鉛色の鈍い光沢を放つドーハムのラッパが、重く、ヤバく、どこか切ない。 なんてことのないハードバップの1枚には違いないかもしれないが、この退廃的なスリルを味わいたければ、心して演奏と対峙するがよい。 「ああ、ヤバいよなぁ、でも、いいよなぁ」 こう思ったアナタはきっと、既に「快楽ジャズ地獄」の淵に足を踏み入れているに違いない。 |
| (2005/11/22) |
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