BLOSSOM DEARIE (Verve) |
| - Blossom Dearie |
|
|
Blossom Dearie (vo,p) Herb Ellis (g) Ray Brown (b) Jo Jones (ds) James Walker (fl) #5 Jason Miles (syn-programming) 1956/09/11&12 1959/04/08 or 09 #17 |
|
|
|
知的な女史。 “メガネ効果”が大きいとはいえ、これが、ジャケットから受けるブロッサム・ディアリーの第一印象。 しかし、良い型でこのイメージは裏切られる。 コケティッシュでキュートな声。 いや、もっと言ってしまえば、ロリータな雰囲気さえ漂う、ちょっと舌足らずな甘い歌声。 たとえば、《エヴリシング・アイヴ・ゴット》での、 ♪スリーピン・アンド・スリーピン… の箇所の、ちょっと媚びたような畳み掛け方は、白痴的な媚態をさらけ出した生々しさすら感じる。 身体は成熟しているのに、声や喋り方が驚くほど子供っぽい女性に接したときのギャップ、これに近いものがあるのかもしれない。 あるいは、オフィスでは知的な雰囲気漂う女性をデートに誘ったら、予想以上に甘えん坊さんで、「あれ?この人、“女性”というよりは、まるで“女の子”じゃないか」と感じる、嬉しさまじりの戸惑い。 こういうタイプの女性って、同性からは嫌われやすいタイプなのかもしれない。 「男に媚びてる。」って。 また、このような女性を前にデレッとする男も、女性からは嫌われるだろうな。 「あんな女に鼻の下を伸ばしちゃってさ」って。 でもね、違うんだよ。べつに、男は彼女のことを物凄く好きだったり、悩殺されてデレデレしているわけじゃないんだ。 私だって、ブロッサムのようなタイプは、べつだん好みじゃない。 女性に限らず、男性だってギャップやサプライズには弱いんだよ。 新鮮で嬉しい驚きは、いつだって大歓迎。 男が嬉しいのは、必ずしも目の前のセクシーボディでも、しなだれかかってくる甘い媚態とは限らない(それも少しあるかもしれないけど…)。 目の前の女性に驚かされている自分自身が楽しいのだ。 そして、間違いなくこのようなタイプの女性には男はもっとも弱い。 それは、顔とか胸といったルックスの問題じゃないんだ。 べつだん、男の誰もが、そのような女性のことを今晩煮たり焼いたりして喰ってやろうとは思わないのだよ(思うかもしれないが…)。 新鮮な驚きを楽しんでいる自分が気持ちいだけっていうのも、よくあることなんだ(オレだけ?)。 話が脱線してしまったが、いずれにしても、この歌声は一度ハマると抜け出せない。 ジトっと体内にまとわりつく。 そして、この感触は悪くない。 なぜなら、その要因の一つに、バックのオケのセンスのよさがあるから。 彼女の控えめながらもツボを抑えたピアノといい、ハーブ・エリスの役どころを弁えたギターといい、しっとりと抑制の効いた雰囲気が常に漂っているからだ。 さらに、ドラムがジョー・ジョーンズだし、 ベースがレイ・ブラウン。 大ベテランばかりじゃないですか! つまり、大人の「分かっている男」たちに囲まれて、彼女は思いっきり甘え、しなだれかかり、いつもよりも2割増しに女の子っぽくふるまっているのだ。 1曲目の《ディード・アイ・ドゥ》は、秋の日のジャズ喫茶。 木枯らしが吹き始めた秋の午後から夕方にかけての時間帯。 屋外は、ひんやりと冬を予感させる冷たい空気。そんな折、ジャズ喫茶の重い扉を開けた瞬間に、濃いコーヒーの香りとともに、趣味の良いリズムに乗った彼女の歌声が流れてきたら、もう何も言うことはない。 この、言いようの無いヴォーカルの力の抜け具合、そして、職人に徹したセンスの良いバックの演奏、まるでこのアルバムは、『チェット・ベイカー・シングズ』の女性バージョンだ。 各曲の演奏時間が短いゆえ、一気に聴きとおすことが出来、なおかつ聴き終わった後も、「あともう一曲ぐらい聴いておきたかったな」と思わせるぐらいの腹八分目感があり、それもまた心地よい。 う〜ん、小粋だ。 |
| (2005/10/29) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |