TONES FOR JOAN'S BONES (Atlantic)
- Chick Corea

  1. Litha
  2. This Is New
  3. Tone's For Joan's Bones
  4. Straight Up And Down

Chick Corea (p)
Joe Farrell (ts,fl)
Woody Shaw (tp)
Steve Swallow (b)
Joe Chambers (ds)

1966/11/30,12/1

チック・コリアの初リーダー作の『トーンズ・フォー・ジョー・ボーンズ』は、ジョー・チェンバースのドラムを聴くためのアルバムだ。
少なくとも私はそういう聴き方をしている。

とにかく、颱風のようにドドーッと畳みかけるように煽るドラミングは、とてもパワフル。そして爽快。
こう感じるのは、きっと彼のドラミングに「迷い」がまったく無いからなのだろう。
また、シンバルのレガートワークや、アクセントの付け方も細かいところまで「分かりやすく」凝っているので、私のようにドラムをやっていない人でも、彼のドラミングが楽しめると思う。

初期のチック・コリアと言えば、代表作として『ナウ・ヒー・シングズ・ナウ・ヒー・ソブズ』が取り上げられることが多い。
ところが、彼の初リーダー作の『トーンズ・フォー・ジョーンズ・ボーンズ』が取り上げられたり、話題にされている記事やガイドって、あまりお目にかかったことがない。
もちろん『ナウ・ヒー・シングズ・ナウ・ヒー・ソブズ』が名盤だということに異論を挟むつもりは全く無いが、個人的には『ジョー・ボーンズ』の方がバラエティ豊かで、チックの瑞々しい感覚があふれ出ているんじゃないかと思っている。

当時のチックは、24歳。
プロデュースは、ハービー・マン。
チックのピアノももちろんそうなのだが、収録された4曲すべてに「勢い」が感じられる。
初リーダー作という気負いも当然あるのだろうが、「あれもやってやろう、これも試してみよう」という溜まり溜まったアイディアを4曲の中に凝縮して一気に吐き出した感じが、演奏全体に活力になっているのかもしれない。

そして、ジョー・チェンバースのドラムが良い推進剤となっている。
良いジャズは、やはりドラムが良くないといけない。
たしかに演奏の要(かなめ)は、いつだってベースなのだが、それでも、音量の大きさ故に、演奏のムードや盛り上がり、盛り下げを簡単、かつ、暴力的に支配出来るのはドラムだけなのだ。
ジャズに限らず、良いバンドには必ず良いドラマーがいるものだ。
どんなに他の楽器奏者が優れていても、ドラム一人がダメだと、もう、そのバンドのサウンドはダメに聴こえてしまう。
少なくとも第一印象は悪く感じる。
だから私は、ドラムという楽器は、言い方悪いが、バカがやってはいけない楽器だと思っている。
音量がデカイ上に音階の無い(厳密に言うとあるのだが)楽器なだけに、その分「音楽」をよく知っていなければいけないし、自分の音が、演奏全体に及ぼす影響力を客観的に計れる人間が叩かないと、アンサンブルは著しくバランスを欠いたものとなる。
演奏の雰囲気や流れを敏感に察知し、的確なサウンドをスティックやペダルを通じて形作ることの出来る人、また、そういう意志や目的のある人以外は、ドラムという音量の大きな楽器に手を出すべきではないと考えているのは、バンド経験の中、ドラムで苦い経験をしてきた私だけだろうか……。

その点、ジョー・チェンバースは合格だ。
よく考えて叩いているし、反応も的確で鋭い。
当時としては新しいアプローチも色々と試みているようだが、一音一音、確信を持って叩いているので、聴いていると非常に清々しい感じさえする。
このアルバムの4曲は、どれも違ったスタイルの曲なのだが、ジョー・チェンバースは、巧みにドラミングを変えて、この場所にはこれしかない!としか言いようのないドラミングで演奏を盛り上げることに貢献している。

このアルバムに収録された4曲を簡単に追いかけてみよう。

スタン・ゲッツも取り上げているチックのオリジナルの《ライザ(リザ)》。
いつ聴いても、テーマのリズムチェンジをした瞬間の飛翔感がたまらない。
ただ個人的な好みから言えば、ゲッツがワンホーンでやっているバージョンの方がスピード感があって好きだ。

2曲目の《ジス・イズ・ニュー》は、しばらくの間はピアノ・トリオで演奏され、途中からテナーとトランペットの二管が入ってくるのだが、2つの管楽器が入る瞬間がなんとも言えず、良い。
ちょっとビッグ・バンド風なアレンジで、かつクサい演出でもあるのだが、それでも聴くたびに「この瞬間」を心待ちにしている自分がいる。

3曲目のタイトル曲、これはピアノトリオで演奏される。
ここでのジョー・チェンバースのドラムもスゴイ。
とにかく細かくコチョコチョと色々と面白いことやっているし、シンバルの音が非常に透き通っている。そして、全体的にパワフルだ。

4曲目の《ストレイト・アップ・アンド・ダウン》。
フリー・ジャズがかっているが、これぐらい「統御されたフリー」なら、騒々しく感じないし、耳障りでもない。
混沌とし過ぎて、着地点の見えないフリージャズの演奏も私は嫌いではないが、少し疲れてしまうことは否めない。
それに比べれば、この曲のコントロールされた混沌具合は、非常に知的な印象を受ける。

もちろん、ジョー・ファレルのテナーサックスも、ウディ・ショウのトランペットの良い味を出している、というフォローをしつつも、やはり上記4曲を通して、「出るところは出る、引き立てるところは立てる」という姿勢を貫いているジョー・チェンバースのドラムを中心に私はいつも耳を追いかけてしまっている。

「スペイン」や「リターン・トゥ・フォーエバー」、あるいは最近のエレクトリックやアコースティックバンドだけがチック・コリアだけじゃないのだよ。
この不思議で、ちょっと新しめな(?)4ビートを堪能出来る、このアルバム。聴いたことの無い人には、是非オススメしたい。
(2002/05/15) 


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