SWING TIME (Sony Records) |
| - Harry Connick,Jr. |
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Harry Connick,Jr. (p,vo) ほか 1992年発売 |
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正直、好んで聴くタイプのミュージシャンではないが、ハリー・コニック,ジュニアは、なーんも考えずに、BGMがわりに聴くには、ちょっと勿体ないぐらいの実力とクオリティを持っていることは確か。 歌はうまいし、ルックスは映画に出演するほどの甘いマスク。 彼のショーは見たことないが、アメリカの大きなホールでは、あちらの富裕層の有閑マダムたちで席が埋まってしまうらしい。 それこそ、日本のオバサマたちが韓国の俳優に注ぐ憧れとメロメロの眼差しと同種のものが、彼に降り注がれるのだそうだ。 それを知ってか、セクシーなサービスたっぷりのキワドいステージングをこなす彼。それを見て、マダムたちはため息をつく。 べつに、それが悪いというわけではない。見上げた芸人魂だと思うし、ショーマンとしての自分自身の商品価値をキチンと自覚していると思う。 おまけに、彼はピアノも巧い。 しかし、彼のピアノは甘いルックスと、メロウな声からはなかなか結びつかないほど硬派だ。一言で言えば、彼のピアノはとてもモンク的。 ちょっと鋭角的で、つっかえるようなリズム感覚。モンクほどエグい和音は弾かないけれども、限りなくモンクに近い和声感覚を持っている。 きっと、彼自身もモンクのことを意識しているのだろうけれども、おそらくモンクのスタイルを取り入れているつもりはないだろう。 なぜなら、ハリー・コニックのピアノ表現はジャズの伝統に根ざしているからだ。 それが彼の保守的ともいえる、安定したスタイルにも繋がっているのだろうけれども、彼はキッチリとジャズの歴史を勉強している。 スウィング時代のジャズや、ストライド・ピアノなどのスタイルもキチンと消化吸収しているところが、彼のピアノに現れているのだ。 セロニアス・モンクのスタイルも、ルーツはハーレム。 染み付いたストライド・ピアノの感覚を彼なりに発展・省略・進化・深化させた結果が、モンクの“あのピアノ”なのだ。 つまり、ハリー・コニックはモンクに似ているのではなく、彼とモンクは根っこが一緒だということだ。同じ根っこながら、このスタイルの消化の仕方と、出てくる音の加工度が違うだけというだけの話。 この一点をもってしても、私がハリー・コニック,ジュニアが気になる理由としては充分なのだ。 正直、ハリー・コニックを聴く感覚と、ほかのモダンジャズを聴くときの気分とはまったく違うんだけれども、優れたプレイヤー、優れたシンガー、優れたパフォーマーでエンターテイナーということは認めざるを得ない。 彼の音楽は常に安定していて、破綻がない。 この破綻のなさがつまらない、というのは禁句、なんだろうなぁ。そういう種類の音楽じゃないんだし、彼自身もそんなことリスナーに望んじゃいないだろう。 もし、ハリー・コニック,ジュニア.を気になった方がいらっしゃれば、日本企画のベストアルバム『スウィング・タイム』をまずはおススメしたい。 彼の甘いヴォーカルはもちろん、モンク的なピアノ、もろハーレムテイストなピアノまで、幅広い彼の音楽性を一枚で俯瞰できると思う。 J-Waveの開局3周年のアニヴァーサリー・ソングの《レット・ミー・ラブ・ユー・イッツ・OK》、 映画『恋人たちの予感』のテーマ曲、サントリー・リザーブのCF曲の《ウィ・アー・イン・ラヴ》、19歳のときに録音されたというピアノソロの《プリーズ・ドント・トーク・アバウト・ミー》、 91年の日本ツアーのオープニングで歌っていた《イッツ・オールライト・ウィズ・ミー》、 モンク的なアプローチのピアノが楽しめる《ワン・ラスト・ピッチ》…。 幅広い切り口でハリーの魅力が編集されているおトク盤といえる。 これを聴いてヴォーカルに興味が湧けば、『ウィ・アー・イン・ラヴ』を紐解けばよいだろうし、ピアノの表現に食指が動けば『ロフティーズ・ローチ・スフレ』を今度は聴いてみよう。 まずは、ハリーの適切な入門アルバムとして、このベスト盤を推したい。 |
| (2006/03/22) |
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