REMEMBERING BUD POWELL (Stretch) |
| - Chick Corea |
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Chick Corea (p) Wallace Roney (tp) Kenny Garrett (as) Joshua Redman (ts) Christian McBride (b) Roy Haynes (ds) Recorded at Mad Hatter Studios,Los Angels,CA 1996 |
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ハッキリ言って、好きではない。 全然面白くない。 期待していただけに、失望も大きかった。 チック・コリアがバド・パウエルを演る。 パウエル・ファンにとっては、あるいはチック・ファンにとっても、なんとも魅惑的な組み合わせではないか。 また、参加ミュージシャンも、今をときめく、そうそうたる面子だ。 文字情報だけで想像を働かせれば、すごい内容なんじゃないかと想像してしまうのも無理はない。 し、か、し。 まず、第一に言えることは、テーマからひとたびアドリブに入ると、もう何の曲を演っているのか、分かりづらくなる。 曲を聴きながらちょっとボケッとして、また演奏に意識が戻った瞬間、「はて、今なんの曲をやっているんだっけ?」状態になる曲が多い(もちろんすべての演奏がそういうわけではないが)。 テーマを吹いた後は、様々な可能性を試行錯誤しながら圧倒的なスピードと音符の量を撒き散らかしながら疾走してゆくコルトレーンのアドリブだって、 たとえ、テーマとはかけ離れた異次元な旋律が生まれようとも、テーマや原曲に“繋がっている感じ”は損なわれていない。 ところが、このアルバムに収録されている演奏には、バド・パウエルの曲との“繋がり感”が希薄なのだ。 テーマだけ演奏したら、あとは形式的、理論的に外れることはせずに、「ただアドリブを取っている」という感じが強い。 話がどんどん横道に逸れていってしまって、元の話題がなんだったのか忘れてしまうような現象に近いものを彼らの演奏からは感じる。 「よーし、“バウンシング・バド”を演るぞ」 「お、いいっすねぇ、俺、この曲大好きなんですよ」 「俺が最初にこの曲を聴いたのは、吉祥寺のジャズ喫茶だったなぁ」 「ああ、そのジャズ喫茶だったら俺もよく行ったよ。帰りによくラーメン喰ってたなぁ。」 「俺は牛丼だったなぁ。今は牛丼は軒並み安いけど、当時は今と比べると高かったよなぁ。」 「牛丼だけじゃなくて、最近はハンバーガーも安いですよね。」 「でも、マクドナルド、あんなに値下げして経営苦しくないのかな?」 「なにかの雑誌で、藤田田の経営のこと書いてあったなぁ」 「週刊実話じゃなかったっけ?お前、あんなオヤジ雑誌読んでんの?」 「たまにね。風俗情報なんかも載ってるしさ。あと、週刊大衆もね。」 「風俗情報だったら、ナイタイとか東スポの“男セン”のほうが手っ取り早いんじゃない?」 「まあ、そうかもしれないけど、床屋や定食屋みたいなところ行くと、必ずその手の週刊誌置いてあるじゃない。ついつい読んじゃうよねぇ。」 「そうそう、普段は読まないけど、何かを待っている間は、ヒマつぶしには丁度いいよな」 おーい!「バウンシング・ウィズ・バド」はどうした!?!? てな感じなのだ。 大袈裟でマヌケな喩えになってしまったが、少なくとも私にはそれぐらい横道にそれたアドリブに聴こえるし、技を披露する際の、単なる“叩き台”以上の意味を“バド・パウエルの曲を演奏するチック・コリアとそのお友達”たちには見いだせない。 曲に対しての“密着度”が、気持ちの上でも、プレイの内容からも希薄に感じられてしまうのだ。 もちろん、皆、演奏は達者だ。破綻がない。 でも、つまらない。 本当につまらない。 バド・パウエルの曲が大好きな私でも、どうして、ここまで自分が好きな曲の魅力を鈍らせることをするのだろうと、怒りを通り越して、とても不思議な気分になっている。 だって、みんなヨソでは良い仕事をしているジャズマンばかりなのだから。 演劇で言うと、「パウエル」という芝居の台本を、ある程度訓練を積んだ役者が無難に棒読みをしているだけな感じ。 そこからは、思い入れも、意気込みもなにも感じられない。 そこそこ上手くて無難なんだけど、伝わってくるものが無い。 まぁ、唯一、言い出しっぺ(?)のチックのピアノからは、多少パウエルに対してリスペクトする気持ちが伝わって来ないわけでもないが、相変わらず流暢で器用なピアノからそれを感じ取ることは中々難しい。 とまぁ、これ以上クドクド悪いことばかりを書いても仕方がないので、このヘンで止めにしておくが、実力者チックらの演奏からは、逆説的に、パウエルの凄さを証明する結果になった作品とも言える。 そして、最後にパウエル好きな人に、そして、パウエルの曲を愛してやまないファンに対してのアドバイスを僭越ながら。 「バウンシング・ウィズ・バド」や「グラス・エンクロージャー」が好きな人は、ブルーノートの『ジ・アメイジング・バド・パウエル』、 「ミーディオウカー」が好きな人は、ヴァーヴの『ザ・ロンリー・ワン』、 「ウィロウ・グローヴ」を聴いてみたい人は、ヴァーヴの『コンプリート・ボックス』、 「ダスク・イン・サンディ」や「オブリヴィオン」が好きな人は、ヴァーヴの『ザ・ジーニアス・オブ・バド・パウエル』、 「テンパス・フュージット」や「シリア」や「アイル・キープ・ラヴィング・ユー」が好きな人は『ジャズ・ジャイアント』、 「クレオパトラの夢」が好きな人はブルーノートの『シーン・チェンジズ』を再度聴くことをオススメします。 そして、チックの演奏を聴いた後は、是非、どの曲でもいいからパウエル自身がピアノを弾いているバージョンと聴き比べることをオススメします。 ホンモノの天才の表現とはどういうものなのか。いかに厳しく、そして音が岐立しているか。 チックたちのヌルい演奏が逆に教えてくれるかもしれない。 このアルバム、スイングジャーナル誌選定ゴールドディスク、なのだそうだ。 |
| (2002/08/06) |
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