NOW HE SINGS,NOW HE SOBS (Solid State→Blue Note) |
| - Chick Corea |
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Chick Corea (p) Miroslav Vitous (b) Roy Haynes (ds) 1968/03/14,19,27 |
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チックのリーダー・アルバム2作目。事実上の彼の出生作ともいえる。 録音した当時のチックは27歳。 そして、録音より30数年の歳月を経て、なおも色褪せない斬新さを持つピアノ・トリオだと思う。 アルバム全体を総括すると、ストレートに疾走するスピード感と、明晰なノリとタッチが印象的だ。 ここが、黒人ジャズ、ことにハードバップ独特のノリとは一線を画するところだ。 ノリは、「揺れ」という言葉に置き換えても良い。 このアルバムにおけるチックのピアノには「揺れ」が無い。 一直線に気持ちよく、心地よいスピードで疾走してゆくようなピアノだ。 ミロスラフ・ヴィトウスの正確なベースワークも、一役買っていると思う。 そして、まったくといって良いほど、ピアノのタッチには「粘り」が無い。 そのかわりに、明るく透き通ったようにクリアな音色と、歯切れの良いタッチを感じることが出来る。 「粘り」は無いが、長いフレーズを弾いても、リズムが損なわれず、フレーズも息切れしていない。 立て続けにハードバップを聴いた後に、このアルバムをかけると、かなり新鮮で近未来的な印象を受けるほど、ノリも音色も音の切れも違うのだ。 近未来的に感じるのは、音色やタッチのほかに、斬新なメロディ感覚に負うところも大きいと思う。 メロディアスだが、幾何学的なフレーズ。 幾何学的といっても、決して無機質ではない。むしろ、演奏に躍動感があるため、フレーズが脈打っている。 息の長いフレーズを、一気に駆け抜けるように、乱れを一切感じさせずに弾ききってしまう技量は凄い。 ここで聴けるチックのピアノを近未来的、幾何学的と書いたが、《マトリクス》という曲を聴けば、いかに新しい感覚で演奏に臨んでいるのかが分かる。 この曲、ブルースなのだ。 全くといって良いほど、ブルース臭は感じられない。 ブルースという「精神性」のアク抜きが綺麗にほどこされ、かわりにブルースという「形式」を分解・再構築、そしてヴァージョン・アップされたような曲想だ。 私は、この曲の土台がブルースを下敷きにしていることに気が付くまでには時間がかかった。 ある日、ミロスラフ・ヴィトウスのベースラインを聴いていたら、ハッと、これってブルースじゃないのか!?と気が付いたのは、このアルバムと出会ってからしばらく後のこと。 なんて自由奔放なピアノなんだろう。 盛り上がり方も素晴らしい。ロイ・ヘインズのドラムの切れ味も素晴らしい。 ヴィトウスの勢いのあるベースソロも素晴らしい。 冒頭に炸裂する《マトリクス》こそ、このアルバムの印象を決定するに相応しい演奏といえるだろう。 私が所有しているCDは、収録曲が13曲ある。 しかし、よく見ると、ボーナストラックが、なんと8曲も! ということは、オリジナル収録曲はたったの5曲だったのか。 このアルバムが出た当初は、アメリカでは評価があまり芳しくなかったそうだ。 むしろ日本の評論家、油井正一氏のほうが、このアルバムの素晴らしさを早くから見抜き、本国のジャズ誌の低い評価に疑問を投げかけた記事を書き、国内に紹介したのだそうだ。 時として、日本の評論家のほうが、本国の評論家よりもジャズマンの資質や素晴らしさを見抜くこともあるようだ。 ソニー・クラークの米国での評価の低さに憤慨して、熱い紹介記事を書いた岩浪洋三氏も同様だ。 日本人とアメリカ人との微妙な聴きどころを捉える感受性の違いや、好みの違いを垣間見るようで、興味深い。 今では、このアルバム、アメリカでは、チックのキャリアの中においては、どのような評価と位置付けがなされているのだろうか? |
| (2002/06/08) |
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