LUSH LIFE (Prestige) |
| - John Coltrane |
|
|
John Coltrane (ts) Donald Byrd (tp) #4 Red Garland (p) #4-5 Earl May (b) #1-3 Paul Chambers (b) #4-5 Art Taylor (ds) #1-3 Louis Hayes (ds) #4 Albert Heath (ds) #5 1957/05/31 1957/08/16 1958/01/10 |
|
|
|
コルトレーンの『バラード』は、あまり好きなアルバムではない。
全体に通底する大甘なムードと、コルトレーンのバラード表現が、個人的には受けつけないからだ。 しかし、このメルマガでも何度か書いていることだが、もちろん私は、彼のバラード表現のすべてが嫌いだというわけではない。 たとえば、『ラッシュ・ライフ』の《ライク・サムワン・イン・ラヴ》は、「へぇ、なかなかイイじゃん」と思うバラードの一つだ。 ピアノ抜き。ドラムとベースだけを伴奏にしたがえたシンプルな編成。 吹いている内容は『バラード』と大きな違いは無いにしろ、ピアノが無いぶん、クドさが抜け、比較的あっさりと聴こえる風通しの良いサウンドが心地よい。 そう思うと、いかに、ピアノという楽器は「砂糖」なんだなということがよくわかる。 砂糖は、配分を間違えると、クドくもなるし、歯にも健康にも悪い。摂取し過ぎると、妙にダルくもなる。 私は、煮物は好きだが、味付けの濃い煮物は苦手で受けつけない。 醤油や塩の入れすぎということもあるが、多くの原因は、砂糖の入れすぎ。砂糖を多く入れると、余計に塩っぱさが際立ち、味つけの濃さを痛感するのだ。 その点、『ラッシュ・ライフ』の前半のピアノ抜きの編成は、最初から砂糖としてのピアノが抜けているぶん、素材の味でシンプルに料理されているので、舌ざわり、いや、耳ざわりが丁度良いのだ。 とくに、最初から濃い味がついている上に、アブラまで乗っているコルトレーンのテナーサックスのこと、なおさら、味付けには慎重になる必要があるのだ。 ピアノという楽器は、それだけ、演奏という味を左右しているのだなということが、『バラード』と『ラッシュ・ライフ』の《ライク・サムワン・イン・ラヴ》を聴けばわかるはずだ。 トミー・フラナガンのようなピアニストは、バッキングの名手、サイドで光るピアニストとよく言われているが、その理由は味付けの名手だからだと思う。 名料理人なのだ。彼が参加したアルバムに名盤が多いのも、トミフラの場合は、コルトレーン、ロリンズなどのアクの強い素材を生かした見事に味付けをしたからに他ならない。 ビッグネームと呼ばれるジャズマンの持つ表現の強さは、そのままアクの強さにも直結するわけで、このアクとどのように付き合うかが、料理人としての腕の見せどころなのだと思う。 ちなみに、このアルバムの後半2曲は、ピアノが参加している。 レッド・ガーランドだ。 《ラッシュ・ライフ》もバラードで、それなりに甘い演奏だが、臭くなるギリギリのところでの寸止めが効いている。 ガーランドも味付けの名手なのだ。 そう考えると、どうも、『バラード』というアルバムのの甘さの原因は、マッコイ・タイナーによる、「押す鍵盤の数が多すぎ」な味付けのような気もしてくる。 マイルス・デイヴィスはハービー・ハンコックに、「バターノートを弾くな」と命じたことがあるという。 「バターノート」というのは、バターは栄養があり、オイシイ食材なことにひっかけたのだと思うが、要するに、おいしい音ばかり弾くなということなのだろう。 マイルスの言うバターノートは、そのまま私がここで使った砂糖に当てはまる。 マッコイ・タイナーは優れたピアニストで、アグレッシヴな曲においては、コルトレーンの激しさと良い意味で相乗効果を発揮するが、『バラード』においては、“砂糖ノート”を使いすぎゆえ、人の味覚(聴覚)によって好みの差が激しく生じるのかもしれない。 先日も、インパルス期のコルトレーンが好きだという女性と、コルトレーン談義を楽しくすることが出来たが、彼女も、『バラード』は苦手だという。 では、『バラード』が好きな人は、激しさを増してゆくインパルス期のコルトレーンの演奏をどう感じるのだろうか? ちょっと興味がある。 さて、『バラード』の話が長くなってしまったので話を『ラッシュ・ライフ』に戻す。 個人的なベストトラックは、《トレーンズ・スロウ・ブルース》だ。 私が持っている輸入盤は、《Trane's Slo Blues》と、誤植になっており、“スロ・ブルース”ってなんじゃそりゃ?なのだが、要するに、コルトレーンによる、スローテンポのブルース。 しかし、スローというよりは、ミドルテンポに近い。 しかも、コルトレーンは、かなりの音数を巻き散らかしているので、それほど、スローなブルースには感じられない。 しかし、音数の多いコルトレーンに対して、余計な遊びをまったく入れないアール・メイのベースプレイには好感が持てる。彼のベースが寡黙だからこそ、互いのプレイを弾きたてあっているのだ。 《ラッシュ・ライフ》の、イントロも結構いい感じ。クサい演出といえば、演出かもしれないが、甘さに溺れる一歩手前で踏みとどまるコルトレーンに好感。 少し早めのテンポの《アイ・ヒア・ア・ラプソディ》は、ズンズンと力強く4ビートを刻むチェンバースが頼もしい。 コルトレーンも好演。 『ラッシュ・ライフ』は、砂糖の量加減が少なめなためか、ちょうど良いボリュームと満腹感を味わえるコルトレーンのアルバムだ。 「よし、聴くぞ!」と、特別の気合い抜きで気軽に楽しめる、数少ないコルトレーンのアルバムといえるだろう。 |
| (2005/04/11) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |