COLTRANE (Prestige)
- John Coltrane

  1. Bakai
  2. Violets For Your Furs
  3. Time Was
  4. Straight Street
  5. While My Lady Sleeps
  6. Chronic Blues

John Coltrane (ts)
Johnnie Splawn (tp)
Sahib Shihab (bs)
Red Garland (p) #1-3
Mal Waldron (p) #4-6
Paul Chambers (b)
Albert Heath (ds)

1957/05/31

インパルスの『コルトレーン』ではなく、こちらはプレスティッジのほうの同名アルバム、『コルトレーン』。
男、ジョン・コルトレーン。30歳のときの初リーダー作だ。

ジャケットのコルトレーン、とてもいい顔をしている。
精悍な表情で、まっすぐこちらを見つめている。そして、自信に満ちた鋭い眼差し。
「よし、ひとつ聴いてやろうじゃないか」という気持ちが湧き上がるのは、きっと私だけではないと思う。

私が好きなのは、一曲目の《バカイ》。
バリトンサックスにトランペットの加わった3管編成で、多彩なアプローチとアンサンブルの曲群を楽しめる。
なんといっても、《バカイ》の多角形的ポリリズムを演出するアフロキューバン・リズムと、鋭角的で大胆なサヒブ・シハブのバリトン・サックスのリフがインパクト満点。
3管による重厚なアンサンブルと、スケールの大きな演奏が良い。
コルトレーンのソロも気合が入っているし、合間に顔を出すガーランドのピアノもなかなかだ。

非ブルース的な肌触りのブルース、《クロニック・ブルース》も面白い。
すでに、この時期から異質なブルース感覚を持ったプレイをしているんだなと思うと興味深い。
ブルースだけを収録したアルバムも出しているコルトレーンだが、やはりコルトレーンのブルースは、どこか微妙にブルース感覚からズレている。
いや、ズレているというよりも、既にブルースのフィーリングよりも、遥か先のほうへ飛んでいってしまっている感じで、サルを見ても、進化の源流とされているネズミをなかなか想起出来ないのと同じような感覚なのかもしれない。
コルトレーンが演奏するブルースにおいては、既に“コルトレーン流の歌”になってしまっているのだ。

このアルバムが紹介されるときに、必ずといって良いほど語られる人気曲、《コートにすみれを》だが、私はコルトレーンのバラードプレイよりも、レッド・ガーランドのピアノソロを高く買っている。

コルトレーンのバラード表現は、この時期から“棒吹き”で、好きな人と嫌いな人とハッキリと好みが分かれるところだろう。

インパルスの『バラード』のように、全曲スローな“棒吹き”のオンパレードだと、さすがに精神的につらいものがあるが、このアルバムの場合は、アフロリズムの<バカイ>とミドルテンポの《タイム・ワズ》と、違った調子曲の間に挟まれているので、流れ的には良いアクセントになっていると思う。
なにより、《コートにすみれを》の、この“棒吹きテナー”の後に、さり気なく登場し、しみじみとした情感をたたえて繰り広げられるレッド・ガーランドのピアノは、いつ聴いても涙ものだ。

コルトレーンの、よく言えば誠実さがにじみ出ているような、悪くいえば、素人が単に原稿を棒読みしているような、抑揚や表情に乏しい、舌足らずとさえ感じられるバラード表現、正直、私はあまり好きではない。
もっとも、この“不器用っぷり”に、男・コルトレーンの“人間臭さ”を見出す人も多いのだろうけど。

『マイ・フェイヴァリッット・シングズ』の《エヴリタイム・ウィ・セイ・グッバイ》のように、かえって“棒吹き”が良い効果を出している演奏も中にはあるので、一概に全否定はしないが、やはりコルトレーンの本領は、アグレッシブさだと思う。
アルバムの中に一曲ぐらいの割合でバラードが入っているぐらいが、良いアクセントとなり、私にとってはちょうど良い。

もちろん、このアルバムの《コートにすみれを》の場合は、まだ許容範囲だし、悪くはないとは思っている。
レッド・ガーランドのピアノソロパートが始まるまでの“序幕”だと思えば、それはそれで、期待感に胸膨らませて聴くことが出来るからだ。
(2003/06/25) 


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