HEAVY METAL BE-BOP (Arista)
- The Brecker Brothers

  1. East River
  2. Inside Out
  3. Some Skunk Funk
  4. Sponge
  5. Funky Sea,Funky Dew
  6. Squids

Randy Brecker (el-tp,key)
Michael Brecker (el-ts)
Barry Finnerty (g,background-vo)
Neil Jason (b,lead-vo)
Terry Bozzio (ds,background-vo)

Recorded Live at Long Island 1978

実は、私はランディ・ブレッカーのワーワーをかけたエレクトリック・トランペットが結構好きだったりする。
同じエレクトリック・トランペット(マイクで拾った生トランペットの音にエフェクターをかけた音)でも、マイルスのエレクトリック・トランペットと比べると、えらくニュアンスが違う。

一言でいえば、ランディのほうが、表面的には“ほにょ・はにゃ”としたサウンドの中にも、一本スジが通っているというか、骨格がしっかりとしているのだ。
トランペット特有の高音の成分をさらに良い感じで強調して、よりいっそう“金属っぽさ”が引き立った音色となっている。

だからといって、マイルスのワーワートランペットが嫌いかというと、そんなことは全く無い。
マイルスのワーワーは、かなり病的というか、何とも形容しがたい重い“妖気”が漂っている。それはそれで、なかなか不吉で、邪悪な音なので、大好きだ。

妖気漂うマイルスの音色のちょうど逆の路線が、ランディのトランペットともいえる。
あくまで健康的で開放的。そして、一本スジの通った音の芯を感じられる。
内へ内へと沈降してゆくマイルスに対し、外へ外へと、どこまでも解放感を感じさせるランディのエレクトリック・トランペットは気持ちがよい。

最初に私がランディのトランペットを聴いたのは、ジャコ・パストリアスのライブビデオだ。
たしか、82年のカナダ・モントリオールのライブだと思った。

ジャコのベースにピーター・アースキンのドラム、そしてパーカッションにドン・アライアスという理想的なリズム・セクション。このリズム隊に、サックスがボブ・ミンツァー、トランペットがランディ・ブレッカーの2ホーン。
それにオセロ・モリノーのスティール・ドラムが色を添えていた。

スティール・ドラムのサウンドが、アンサンブルに面白い効果を出していたし、テナーサックスではなくバス・クラリネットを吹いたときのボブ・ミンツァーのプレイも良かった。
そして、ひときわサウンドをカラフルにしていたのが、ランディ・ブレッカーのワーワー・トランペットだ。

ビジュアル的には、なんだか地味なヨーロッパのパン屋さんみたいなオジさんがトランペットを吹いているなぁと思った程度だが、彼のワーワートランペットの音色は、ジャコならではのクリエイティブなグループサウンドを作る上で、大きく貢献していた。

だから、私が『ヘヴィ・メタル・ビ・バップ』を始めて聴いたときも、まず一番初めに耳を奪われたのは、一曲目のヴォーカルナンバーでも、マイケル・ブレッカーのウインド・シンセでもなく、ランディのトランペットだった。

カッコイイ!

むしろ、ヘヴィなロック寄りのリズムのほうが、この音色は合っているんじゃないかと思ったほどだ。

そう、ランディのエレクトリック・ラッパは、ラッパにしてラッパにあらず。
これは、ギターの感覚なのだ。
ギターより強力なこのサウンドは、どんなにバックのリズムの壁が厚くなっても、アメーバのように形を自在に変えて侵食してゆく柔軟性の高いラッパだ。

『ヘヴィ・メタル・ビ・バップ』は、“ヘヴィ・メタル”というタイトルに腰が引けてしまう人もいるかもしれないが、全然ヘヴィ・メタルじゃないのでご安心を。
ただし、演奏のテンションとレベルは高く、沸き起こる興奮と、感じるエネルギーはロックのそれに近い。まさに怒涛のライブだ。

フランク・ザッパや、スティーヴ・ヴァイらとの共演歴のある、ロック畑のドラマー、テリー・ボジオを迎えたことも、演奏のエネルギーアップの大きな原因だと思う。
とにかく叩きまくりの圧倒的なドラムの洪水。これは、ドラムをやっている人には堪えられないんじゃないかな?

私は、シャッフル・リズムのブルース、《インサイド・アウト》が好きだ。
シンプルだが立体感のあるベースラインが印象的な曲で、私もこのラインをコピーしてみたこともある。
そういえば、このラインはジャコも弾いていた。 彼がベースの弾き方をレクチャーするベースの教則ビデオが出ており、ビデオの後半ではジョン・スコと「F」のキーのブルースをセッションしているが、彼もアクセント的に、このラインをこの演奏の途中で弾いていた。
トレード・マークの“ドナルド・ダックのような口”をニヤリとさせて、このフレーズを弾いていたから、自覚的に引用していたに違いない。
もちろん、ベースラインだけではなく、曲そのものもカッコいい。

やはり、ランディのラッパの音色が、演奏にとてもよくマッチしていていると思う。
ワーワーをかけた音色も最高だが、フレーズもよく歌っている。

ブレッカー・ブラザーズといえば、ほとんどの人がマイケル・ブレッカーのプレイに注目していると思う。
たしかに彼の正確なテクニックと、洗練されたセンスは凄いとは思うが、どうしても、私の場合は兄のランディのトランペットばかりを耳で追いかけてしまう。

テクニック面が弟だとすると、フィーリング面においては兄。
そして、フィーリングと表情の豊かな兄のプレイの方がずっと魅力的だと私は感じるのだが……。

(2002/10/29) 


Brecker Brothers | Jazz Blog | Cafe Montmartre

←backward
homeJazz Albums

forward→


Copyright(c) Kumo Takano,
All Rights Reserved.