IN THE YEAR OF THE DRAGON (DIW) |
| - Geri Allen |
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Geri Allen (p) Charlie Haden (b) Paul Motian (ds) 1989年3月 |
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ピアニスト、ジェリ・アレンのプロフィールを羅列した履歴書のようなアルバムだ。 アイラーのように『マイ・ネーム・イズ・ジェリ・アレン』とでもすれば良かったのに。 …というのは冗談で、やはりラストのタイトル曲の演奏が素晴らしいから、このタイトルになったのだろう。 履歴書のような…、というのは、このアルバムの選曲を見ると、パウエルあり、ブルースあり、ケーナ参加の曲あり、フリージャズの要素あり、ヘイデンの定番ナンバーありと、様々なスタイルの曲の演奏を通して、彼女のピアノの魅力が様々な角度から味わえるから。 そのぶん、アルバム全体の統一感には多少欠けるきらいもあるが、どこを切り取っても本質的に重いタッチのピアノゆえ、それほど散漫な内容には感じない。 残念なのが、冒頭からハイピッチで飛ばすバド・パウエルの名曲《オブリヴィアン》。 勢いは伝わるが、いまひとつジェリのピアノが冴えない。 テンポが速すぎるのだろうか、大したアイディアの出ないまま、とにかく指先がテンポに遅れぬよう必死に時間の穴埋めをしているかのようで、これだ!というフレーズはついぞ出ないままピアノのアドリブは終了してしまう。 同様にポール・モチアンのドラミングも、かなりラフ。とにかく急速調のテンポのリズムキープに手いっぱいなのか、派手なオカズを多用して演奏を盛り上げようとしているものの、どこか一本調子。 単調なベースワークしか聴くことの出来ない4バースも無理して盛り込む必要があったのだろうか?などなど、この演奏に関しては、聴き手を満足させるだけの演奏に達していない。 本家バド・パウエルの演奏(ヴァーヴの『ジーニアス・オブ・バド・パウエル』に収録されている)があまりに素晴らしすぎるため、ジェリにとっては不利な素材だったのかもしれない。 このトリオの本領がもっとも発揮されたのは、やはりタイトル曲の《イン・ザ・イヤー・オブ・ザ・ドラゴン》だろう。ジェリの重くドロッと粘るピアノが引き立つ曲と演奏だ。 チャーリー・ヘイデンの寡黙なベースも、このような曲を盛り上げる役割には最適だ。音数すくないドローンとした低音が妖しさが倍化させるのだ。 テンポを刻みつつ、シンバルからエッジの立った金属音を発して雰囲気を盛り上げるモーチアンも、まさに適任。 もう一つの目玉は、ヘイデン作曲の2曲。 《シー・ユー・アット・パー・テュッティズ》は、陽気で能天気な曲調を重く暗くスイングさせているギャップが面白い。 ヘイデンのベースソロが聴きもので、明るい言葉をダークなトーンで雄弁に語っているかのよう。ヘイデンの一筋縄ではいかない、ちょっと屈折した美意識が露になった演奏だ。 もう一曲が、ヘイデンの代表的レパートリー《ファースト・ソング》。意外とあっさりしたアプローチ。かなり淡白だが、正攻法で挑んだこの演奏は、ある意味正解かもしれない。間を活かしたシンプルな演奏により、より一層、この曲の哀しさが際立っているのだ。 大学の卒論のテーマが「エリック・ドルフィーの研究」だったジェリ・アレン。深いレベルでジャズの歴史とスタイルを研究・吸収・消化していることは、そのプレイの一端からも伺えるが、ことモンクやニコルズからの影響を強く感じる。 重層的な和声構造に、重くドロリと時間軸に溶けてゆくようなタイム感覚。時折見せる鋭いアグレッシヴさも彼女ならではのもの。 どこまでも重く、粘りのある彼女のピアノのスタイルは、次作の『セグメンツ』でよりいっそう開花する。 |
| (2006/07/30) |
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