MERCY,MERCY,MERCY! (Capitol)
- Cannonball Adderley

  1. Introduction~Fun
  2. Games
  3. Mercy, Mercy, Mercy
  4. Sticks
  5. Hippodelphia
  6. Sack O' Woe

Cannonball Adderley (as)
Nat Adderley (tp)
Joe Zawinul (p,el-p)
Victor Gaskin (b)
Roy McCurdy (ds)

1966/10月

目玉はなんといっても大ヒットしたファンキー・チューン《マーシー、マ ーシー、マーシー》。

作曲者は、当時キャノンボール・アダレイのグループに在籍していたピアニストの(後にエレピも弾く)ジョー・ザヴィヌル。
もちろん作曲者のザヴィヌル本人も、このアルバムの演奏(スタジオでのライブ)にも参加している。

彼はオーストリア出身の白人だが、
この曲には、黒人独特のファンキー&ゴスペルフィーリングを巧みに取り入れている。

クリーミーでいてバネのある柔らかいノリは、モータウン・ミュージックなどで感じとれる、メロディアスなブラックミュージックの心地よさそのままだ。

そして、この曲にはピアノよりもエレピの音がよく似合う。

抑制を効かせ、甘くとろけるようなバッキングを加えるザヴィヌルのプレイ。
さすが、作曲者なだけあって、“曲の心”をよくわかっている。

当時、この曲のヒットにより、キャノンボールは硬派なジャズマニアからは「ファンクの御用商人」と揶揄されたようだ。

たしかにパーカーの後釜的な実力を有してたキャノンボールのこと、それゆえ周囲からの過大な期待と逆向きの方向に移行してしまったことにより、ストレートアヘッドなジャズファンを腰砕けにさせたのは分からないでもない。

それでも、やはり音楽の方向性がどうであれ、彼の闊達なアルトプレイは変わることなく、このアルバムを聴くと、むしろ、彼の本質はこちらのほうにあるんじゃないかとすら思えてしまうほど。

あるいは、ルー・ドナルドソンもそうだが、パーカーのスタイル、つまりバップのイディオムを消化し、演奏してきたことによって基礎体力を培ったアルト奏者は、ビ・バップのイディオムから、シンプルな方向へと回帰する傾向にあるのかな?

時おり、フラジオをかまし、少し歪んだアルトのトーンでせまる兄・キャノンボール。
たとえば、マイルスと共演していたときの、クリアで明朗なトーンとは大違い。

しかし、むしろ、このアルバムで演奏されているナンバーには、ダーティな音色のほうが似合う。

キャノンボールの熱演は言うまでもないが、それ以上に、弟・ナットのコルネットも力演だ。

兄に比べると、プレイも存在感も地味で小粒なイメージをぬぐえない彼ではあるが、なかなかどうして。
金属の音を空気中に「たたきつける」という表現がまさにピッタリと当てはまるような熱のこもった吹奏だ。

演奏をより一層エキサイティングにしているのは、ナットの頑張りっぷりによるものが大きい。

ライブ会場の盛り上がりは興奮した客の歓声や、手拍子、拍手を聞けばお分かりのとおり。

もっとも、このスタジオ・ライブは、レコーディングを盛り上げるための事前のお膳立てがあったことは知らなくてもいいけど、知っておいてもよいだろう。

つまり、スタジオ・ライブゆえ、集まったのは、場の雰囲気を盛り上げるために招待されたお客たち。
つまり、演奏の盛り上げ要因ということは、彼らも自覚していたはず。

加えて、彼らは、スタジオで配られた酒を飲んでいた。
高揚してきた気分の中、このようなエキサイティングな演奏が始まったので、盛り上がらないはずがない。

より一層、熱狂はたかまり、観客の声援に呼応するように演奏も盛り上がってゆくという構図が生まれた。

もっとも、演奏を聴けば分かるとおり、“酔ったサクラ”が歓声をあげる“擬似ライブ”でなくとも、彼らの充実した演奏には変わらなかっただろう。
(2007/02/04) 


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