LIVE! (East Works Entertainment)
- 綾戸智絵

disk 1
  1. Only You
  2. In A Mellow Tone
  3. By The Time I Get To Phoenix
  4. Tennessee Waltz
  5. Give Me The Simple Life
  6. Everybody Everywhere
  7. Love Letters
  8. Route 66
  9. Love
  10. Georgia On My Mind
  11. Over The Rainbow

disk 2

  1. Amazing Grace
  2. His Eye Is On The Sparrow
  3. Your Song~For All We Know
  4. That's All
  5. September In The Rain
  6. A Song For You
  7. Work Song
  8. You Are So Beautiful
  9. It's Only A Paper Moon
  10. Bridge Over Troubled Water
  11. Yozora No Mukou
  12. Heart Of Gold

綾戸智絵 (vo,p)

2000/12/12 (disc 1)
2000/12/16 (disc 2)


ジャズやゴスペルをベースに、独自のエンターテイメント性を発揮し、今や押しも押されぬ人気弾き語りシンガーの1人、綾戸智絵の楽しい2枚組のライブだ。

彼女の音楽を「ジャズじゃない」と眉をひそめるジャズファンも少なくない。かくいう私自身、彼女の歌に「ジャズ」はほとんど感じないし、ジャズミュージシャンだとも思っていない。

しかし、ジャズであろうとなかろうと、それは瑣末な問題。
歌とMCで人を楽しませる実力を持ったエンターテイナーだということは、誰しもが認めるところだろう。

ま、このコテコテなキャラゆえ、好き嫌いは分かれそうだが……。

まだ彼女の音楽を聴いたことのない人は、綾戸智絵の魅力、キャラクターを存分に味わえる、このライブ盤で入門すると良いと思う。

1枚目は平成12年12月12日(大江戸線の開通日だそうです)、六本木の「スイート・ベイジル」、2枚目は同年12月16日、札幌のキタラ大ホールでの演奏。

そして、オススメしたいのが、1枚目のスイート・ベイジルのほうのライブのほうだ。
これは、会場の大きさも関係しているのかもしれない。

2008座席もの容量を持つ札幌の大ホールよりも、この7分の1前後の座席数の「スイー・ベイジル」でのパフォーマンスほうが、だんぜん楽しめる内容となっている。
より観客との距離感が近いからなのかもしれないし、あるいは、オフィシャルな気分にならずにリラックスした気分で演奏に臨めたのかもしれない。

音源から伺える、会場内に漂う空気も「スイート・ベイジル」のほうが、圧倒的にほぐれている。
ま、それは飲み食いしながらカジュアルな気持ちで鑑賞できる「スイート・ベイジル」と、クラシックの演奏の多い会場(キタラ大ホール)で鑑賞するのとでは、観客の気分もノリも違うことは当然といえるかもしれない。

とくに、歌やピアノのみならず綾戸智絵のキャラは1枚目の《ジョージア・オン・マイ・マインド》を歌う前のMCで存分に味わえる。

ジョージアに住んでいた時の思い出を、オクラや納豆やモロヘイヤとともに語る、この庶民的かつ、おもわず親近感を抱いてしまうオバちゃんキャラ。
そして、最後のオチは、サッチモテイストのダミ声で、「ねば、ねば、ねば〜」と歌い、「糸引いてるでしょ〜?」。

このベタさ加減は、まるで吉本興行のお笑い感覚。
そう、彼女は吉本のある大阪出身なんですね。

大阪のコテコテさと、ゴスペルやブルースのもつコテコテさが違和感なく融合しているのが、シンガー兼ピアニストの綾戸智絵の個性なのだ。

もっとも、私の場合、綾戸の音楽を聴いて思い浮かべるのは、アメリカ南部のソウルフードのテイストよりも、たこ焼きやお好み焼きなどの「粉モノ・ウィズ・ソース」な関西系ソウルフードの味なんだけどね。

さて、このライブ盤にも収録されている彼女の持ち歌の中でも人気の高い《ジョージア〜》だが、曲前のMCは楽しいが、肝心の演奏はというと、思いを込め過ぎたのだろうか、力が入りすぎて、雑な歌唱になってしまっているのが残念。
生で見れば、それなりに感動出来たのだろうが、CDの音情報のみで接すると、ちょと辛いものがある。

これは《テネシー・ワルツ》、《オーヴァー・ザ・レインボウ》や、2枚目の《明日に架ける橋》も同様のことが言える。
誰もが知る有名曲に独自のカラーを織り交ぜ、なおかつ高級仕立てにフィニッシュしようという意気込みは分かるが、空振り感は否めない。

このライブ盤に収録された、畏まったバラードには、いまひとつ深さが足りないように思う。
ただし、《アメイジング・グレイス》は、それなりに良い。

個人的には、バラード客を手拍子で乗せてノリノリに弾き、歌いまくる《ルート66》や《ワーク・ソング》のほうにエンターテイナー・綾戸智絵の真骨頂を見る思いだ。

客を笑わせ、客を乗せ、最終的には大きな感動で包み込む、そんな綾戸智絵のキャラクターがよく分かるアルバムが『ライブ!』だ。
これを聴いて彼女のライブに足を運びたくなる人も多いはず。

ジャズテイストな装い、そのじつ一皮めくればソースの匂いが濃厚に漂うエンターテインメント・ミュージックゆえ、この魅力にとりつかれる人も多いことだろう。
ジャズファンや、ジャズヴォーカルファンよりも、彼女の場合は「綾戸ファン」の方が多いのではないかと思われる。

とにかく、お腹が空いたとき(音楽が聴きたいとき)、お腹いっぱいになりたいとき(たっぷりと音楽に浸りたいとき)には、お好み焼きを食べる感覚で綾戸智絵のライブ盤を聴くといい。
庶民的で、おいしく、「ああ、もうダメ、これ以上は無理、カンベンして!」と嬉しい悲鳴を上げるほどの中身の濃さとボリュームたっぷりなサービス精神を味わうことが出来る。

もちろん、2枚全曲を一気に聴くとものすごくお腹一杯になっちゃうけれども、その日の気分で、おやつ感覚で数曲つまみ食いするのは悪くない。

とにかく、サービス精神満点の2枚組のライブ盤なので、お腹が空いて空いてどうしようもないときは、たっぷり賞味して、気持ちよく食いだおれてください。
(2006/12/07) 
(加筆修正:2011/01/04) 


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