BACK COUNTRY SUITE (Prestige) |
| - Mose Allison |
|
|
Mose Allison (p,vo) Taylor La Fargue (b) Frank Isola (ds) 1957/03/07 |
|
|
|
ピアノトリオによる、軽やかな短編エッセイ集。 このような趣きのあるモーズ・アリソンの『バック・カントリー・スイート』は、気軽な気分で聴けるアルバムだ。 1曲目から10曲目までは、「バック・カントリー・スイート・フォー・ピアノ」と名づけられ、1分から2分弱の短めの曲が、まるで小皿料理が次々と運ばれるように演奏されてゆく。 前のめりで多少性急なノリのピアノだが、こちらの気分が腹八分目になる一歩手前で次の曲へと、次の局面へと展開してゆくので、飽きることなく聴きとおせる。 それこそ小皿料理のように。 満腹感ではなく、少しずつ味とバリエーションを楽しんでゆく感覚だ。 ときおり、ピアノトリオに鼻歌のようなヴォーカルも加わるが、この鼻歌感覚の少し調子っぱずれな歌は、決して上手なものではない。 モーズ・アリソンは、キャバレーやクラブを活動のメインの舞台にし、弾き方りもこなすピアニストではあるが、ピアノの演奏に比べると、ヴォーカルのほうはといえば、あくまで余芸の域の出ていないのではないかと感じる。 とくに、同じキャバレーでの弾き語りの活動が多かったマット・デニスなどと比較すると、彼の軽妙洒脱なヴォーカルには足元にもおよばない。 しかし、ヴォーカルはあくまでアクセント程度の出し方にとどめているからか、あまり彼の鼻声な調子っぱずれは気にならない。 気がつくともう次の曲に突入しているという按配。 このへんにもストーリーテリングの巧みさを感じる。 もとよりキャバレー歌手のアリソン。 客の飲食の邪魔にならないピアノを弾く術には長けているゆえか、邪魔にならない「聴かせ方」に長けた人物なのだろう。 軽やかなBGMとしても聴くにも最適な上、じっくり聴きこんでも相応の手ごたえ。 まるで日常風景のようなピアノとヴォーカル。 一定のクオリティ以上の演奏は提供するけれども、そのあとの受け取り方はお客様のご随意に。 こう言わんばかりのさり気なくハイクオリティな演奏は気持ち良い。 しかし、演奏時間の短い小品を何曲も連ね、スッと耳の中に入り込ませる流れを構築しているこのアルバムは、普段はBGMとして聴かれている自分の音楽を、もう少しリスナーの耳の奥に届かせたいちおうアリソンの欲望のあらわれなのかもしれない。 小さなクラブで、軽い気持ちでグラスを傾けながら耳を傾ける軽妙かつ良質なジャズに編集のまなざしのはいった構成。 ゆえに、このアルバムは盛孫の代表作として心あるジャズファンたちによって語り継がれているのだろう。 シンバルのトップを多様して、チンチキ・チンチキと軽やかに演奏を鼓舞するフランク・イソラのドラミングも軽快で気持ちがよく、また、ベースのベースたる役割をまっとうするテイラー・ラファーグの太い音も、さり気なくモーズ・アリソンのピアノを効果的に底上げしている。 気負いを一切持たず、気軽に聴ける「普段着のジャズ」と言えるだろう。 昼下がりにコーヒーでも飲みながら。 |
| (2009/01/03) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |