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京 極 夏 彦 の 革 手 袋


京極夏彦はいつも黒い革手袋をしている。
見ているほうとしては、暑そうな上に鬱陶しいし、ひょっとしたら、仮面ライダーかキカイダーぐらいには変身出来るのかなどと、あらぬ想像をしてしまうのだが、あれはあれで、彼なりの一種のトレードマークなのつもりなのだろう。

夏目漱石にしろ、芥川龍之介にしろ、我々がすぐに思い浮かべることが出来る有名なポーズと表情のポートレイトがある。
昔の作家は、今ほどメディアに露出する機会が少なかったし、当時は写真自体が貴重な時代だったので、彼らは世に出回るたった一枚の写真にも、ポーズや表情には相当な神経を使って、セルフイメージを構築していたのかもしれない。
そういえば、最近では、平野啓一郎は、写真を撮られるときは必ずピアスをしている側の耳を見せているな(カメラマンがそちらの角度から写したがるだけかもしれないが)。

現代の作家は、昔以上に自分の姿がメディアに露出する機会が多くなるので、同じポーズを取り続けたり、作った表情を崩さないで写真に映るというのは至難のワザ。だったら、サングラスや皮手袋のような小道具、あるいは、いつも黒い服を着ている、いつも帽子をかぶっている、といったファッションにセルフイメージを転嫁させてしまったほうが、ラクだし効率が良い。

作家はナルシストが多い(と私は思う)ので、今も昔も表現方法は変われど、自己イメージを読者にどうプレゼンテーションしようかということには、案外我々の想像以上に神経を使っているのかもしれない。

(記:2001/09/15)