さあ、フリー・ジャズを聴こう!
なんでもいいから、フリー・ジャズを聴こう!
大きなショップのフリージャズのコーナーへ行き、とにかく何でもいいからフリー・ジャズのアルバムを買ってみよう。1枚でもいいし、出来れば5枚ぐらいまとめて買っちゃおう。
予算が少なければ、ディスク・ユニオンのような専門店の中古コーナーに行ってみよう。
ディスク・ユニオンのジャズ専門店には、フリー・ジャズの中古CDコーナーがあるよ。そこで安いアルバムを狙うという手も一つの手だね。でも、さすがに自分のところのレーベル「DIW」の中古は、そんなに安くないけどね。やっぱり「安い」イメージがくっつくのがイヤなのかな?
おかげで、阿部 薫やデヴィッド・マレイを買うときは、私、いつも躊躇しちゃいますですよ。そして、思いますよ。あと300円安ければ、もっと興味半分で買う人が増えるのになー、と。
え? 知らない人ばかりで、何を買ったらいいか分からない?
それは、当然でしょう。これから未知の体験をしようというんだから。桑田けーすけはフリージャズのコーナーにはありませんですよ。
パッと取ったジャケットが気に入れば、それをまず買うってのも一つの手だよ。ジャケットは、中身の音楽を語っていることが多いです。知らないミュージシャンのアルバムを買うときは、「ジャケ買い」が一番。
え?それでも、予備知識の無いアルバムを買うのが不安ですか?
じゃあ、予備知識があると、不安じゃないんですかね?
評論家の人が難解な用語と文章で、フリージャズのアルバムを褒めている雑誌なんかの記事を読めば買いますか?(ちなみに、国内の専門誌は、フリージャズのことを詳しく取り扱ったり、特集したりすることは滅多に無いよ)
買わないでしょう?
そんなの読んじゃうと、むしろ、あ、難しい、やーめたっ!ってなる可能性の方が高いと思いますよ。
何の予備知識もない状態で、そう、予備知識があなたの純粋な好奇心を邪魔していない状態で、自分の嗅覚と直感をフル動員させようよ。
嗅覚を働かせて買ったCDの内容が自分のお気に入りだったら、かなり嬉しいよ。ホームページを持っている人だったら、その日の日記に書いて自慢しちゃうことでしょう。
え?それでも知らない人や予備知識の無い人のアルバムを買うのが不安?
しょーがないなー。
アナタは、「言葉の予備知識」が無いとアルバムを買えない人なんだ。
オリコンチャートで何位とか、
何週連続、どこそこの局でヘヴィ・ローテーションだったとか、
「目覚ましテレビ」で軽部真一がミュージシャンにインタビューをしていたとか、
「トクだね!」で小倉さんが「いいんですよ、これは」と褒めてたとか、
みのもんたオススメだとか(←それは健康食品)、
モーニング娘。に新たに3人が加わったとか、
椎名林檎が看護婦の格好をしているとか、
大御所ミュージシャンが初のベストを出したとか、
雑誌にこれを聴かないヤツはモグリだ的な記事が載っていたとか、
この冬のクリスマスに、彼女と聴いて過ごすアルバムはこれだ!とか、
今買うと特性ノヴェルティ・グッズが当たるかもしれないとか、
何百万枚売れているとか、
タワー・レコードやHMVの売れ行きベストに入っていただからとか、
何年の沈黙を破って世に問う、衝撃の問題作だとか…
そういった「言葉」や「情報」や「ビジュアル」などの予備知識が無いと、アナタは音楽を買えないんですか?
でも、よくよく考えてみてください。
上に書いた、さまざまな情報や内容は、直接「音楽の良し悪し」と関係ありますか?
さらに。
最終的に音楽の良し悪しを決めるのはアナタ自身じゃありませんか?
人がどう言おうと、メンバーが何人脱退しようが加入しようが、それは単なる「話題」でしょ?
「話題の内容」と「音楽の良さ」はあまり関係無いような気もするのですが。
というより、あ、そうか!
アナタは、「音楽そのもの」にお金を払っていたんじゃなくて、「話題」にお金を払っていたのですね。なるほど、アナタはイイ人だ。「話題提供者」や「仕掛け人」は「してやったり!」と大喜びしていますよ。
こりゃ目出度い。こりゃこりゃ。よく分からないけど。
え?そんなんじゃない。オレは「音楽」を聴くために、「音楽」を愉しむためにアルバムを買って聴いているんだ?
ナルホド、そうでしたか。
じゃあ、フリー・ジャズを聴きましょう。べつに現代音楽でもいっこうに構わないんですけど、ほら、私、ジャズのほうが詳しいから、どうしても自分の土俵に話題を引き寄せて話を進めちゃうんですよ、スイマセンね。
フリー・ジャズの何がいいかって?
「よく分かんねぇ」ところが良いですね。
ぶっちゃけた話、何回聴いても「よく分かんねぇ」音楽が多いです。
だから、気になります。気になるから何回も聴いちゃいます。何回聴いたところで「分かる」というものでもないですが、巷でヒットしているアルバムを数回聴いて、「分かった」気分になって、あとはCDラックのコヤシにするよりはずっとマシです。こういうのって、「音楽を聴いた」と言うんじゃなくて、「話題を消費した」と言ったほうが、より正確な表現だと思いません?
何がなんだかよく分からんけど、でも、なんだか気になる。耳や心にひっかかりが残る。
こう感じられれば、フリー・ジャズを聴く上ではまず合格と言えましょう。
そんなもんなんだから。
分からなくていいのです。ましてや、言葉による理解なんてもってのほかです。
言葉による知識は、時として、聴き手の純粋な音楽的好奇心を妨げます。
別に無理して理解しなくたっていいんだよ。
第一、音楽は、「理解するもの」じゃないんだから。
「体験」するものなんだよ。
「感じる」ものなんだよ。
仮に、不愉快な気分になったり、頭が痛くなったって、いいじゃないの。
「不愉快な気分」になったという「体験」をすることが出来たんだから。
「損した!」「金返せ!」と喚く、ケチな御仁もいるでしょうが…。
「ワクワク、ウキウキした気分」になりたいがために、ビョークの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や、スプラッター映画を観ますか? 観ないでしょ?
でも、人は映画館やレンタル屋にお金を払って観ようとする。
何のために?
人それぞれだろうが、それこそ話題や出演者によって触手が動く要素が多いのだろうけども、それだけじゃなく、2時間前後の「体験」をするために、2時間前後の映像と音から何かを「感じる」ためにでしょ?
フリージャズを聴いている我々も、まったく同じ。
未知の体験をするためにフリージャズを聴く。
不思議な気分になりたいからフリージャズを聴く。
日常生活や、売れ線音楽に飽き飽きして、あるいは辟易しているからフリー・ジャズを聴く。
今まで感じたこともない強烈な体験を求めてフリージャズを聴く。
まったく違う世界を覗いてみたくてフリージャズを聴く。
生々しい出来事に立ち会うためにフリージャズを聴く。
アルコール度数の高い酒を飲んで「かぁ〜っ!!!」とするのと同じ気分になりたいがためにフリージャズを聴く。
他の人が知らない、自分だけの密やかな愉しみを見つけだすためにフリージャズを聴く。
怖いもの見たさ(聴きたさ)でフリージャズを聴く。
動機はいろいろだけども、「フリージャズ」は、文字通り「フリー」。送り手が音楽的な「規則」にガンジガラメにされずに、少しでも自由になろうとして表現している音楽なんだから、聴き手の我々も自由な気持ちで聴けばいいんですよ。
え?ジョン・ケージがこう言ってた?
フリー・ジャズという演奏方法は全然自由ではない? だから自由じゃない?
また、「言葉による知識」が邪魔していますね。
たしかにジョン・ケージはそう思ったんだろうけど、アナタ自身も本当にそう思っているんですか?
それ以前に、アナタはフリー・ジャズのアルバムを何枚聴きましたか?
まさか、聴いたことないのにそんなこと言っているんじゃないでしょうね?
とにかく、マスコミやショップが、周到にお膳立てした「事前情報」を仕入れて、で、店頭やテレビでかかる音楽の一部分を聴いてから「買う・買わない」を決めている、真面目で、予習好きで、オベンキョー熱心なアナタ、たまには予習なんかしないで、パーッと散財してみましょうよ。
流行っているから聴かなきゃいけないなんて義務は、昔からまったく無いんですから。それとも、第三者が用意してくれた「あらかじめ着地点がなんとなく見えている感動」だけを享受して一生を終わることを良しとするのですか?
フリー・ジャズを買って聴くことが、そんなアナタの生真面目な気質を氷解させる特効薬の一つです。
さぁ、フリー・ジャズを聴こう!
ヘンな先入観をもたれないよう、敢えてミュージシャンの名前はここには記しません。好きなミュージシャンぐらい自分で探そうぜ!
そして、あなた自身が選んだフリー・ジャズを、浴びるように聴いてみよう!!
そこには、どんな体験が待っていることでしょう、ワクワクしてきませんか?
何の予備知識もない状態で、真っ新な状態で音楽と向き合えるんですよ。こんなことって滅多に無いことじゃありませんか?
新鮮な体験になることには間違いありません。
さぁ、フリージャズを聴こう!
聴いて、聴いて、聴きまくろう!
(記:2001/11/25)
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